2017年04月25日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】わかる「21世紀の資本」

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】わかる「21世紀の資本」



 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。



■      今日のおすすめ


 「図解『ピケティ入門』」(高橋 洋一著 あさ出版)



■      世界的名著『21世紀の資本』の核心が簡単に掴める解説書(はじめに)


 トマ・ピケティの『21世紀の資本』(邦訳=みすず書房)は、現在の世界経済の状況を“20か国、300年分ものデータ”によって科学的に分析した名著です。本国のフランスは勿論アメリカ、日本でもベストセラーになった名著です。『21世紀の資本』は、私達経営に係る者にとっては必読の書と言えます。


 必読と言われても、700ページを超える大著を読む余裕は無いし、でも「何とかして、名著『21世紀の資本』の核心は頭に入れておきたい」と思う人にピッタリの本が今日の紹介本です。


 紹介本のオリジナル本である『21世紀の資本』(邦訳=みすず書房)には、97枚の図と18枚の表が掲載されていますが、紹介本は、その20%弱の21枚の図で、核心に導く解説本です。数学的分析に強く、大蔵省理財局で活躍した著者ならではの解説本と思います。


 


■      結局のところピケティは何を言いたいのか


【ピケティの第一法則】


 第一の法則は、資本所得シェア(α)=資本収益率(r)×資本所得比率(β)です。資本所得シェア(α)から行きましょう。資本所得と労働所得の合計が国民総所得ですから、「資本所得+労働所得=国民総所得」です。資本所得シェア(α)は、国民総所得に占める資本所得の占有率です。国民所得の何%を資本所得が占めているかを示す指標です。資本収益率(r)は、資本所得/資本で表されます。解りやすく言うと利回りですね。資本所得比率(β)は、長期に亘る資本のストックが1年の国民総所得(資本所得+労働所得)の何倍かを比率で表します。ピケティは「国民資本=公的資本+民間資本」とし乍ら、公的資本は横這いであるとのデータを得て、民間資本に的を絞り理論展開をします。


 例えば、資本収益率が年5%で、資本所得比率が600%だとしたら、資本所得シェアαは30%になります。つまり国民所得の30%が労働による所得ではなく、所有する資本から得た所得ということになります。


 ピケティは、この第一法則は、『資本主義システムを分析するための三つの最重要概念の間にある、単純で明快な関係を表現したものだ』としています。


【ピケティの第二法則】


 第二の法則は、資本所得比率(β)=国民所得に占める貯蓄率(s)/GDP成長率(g)です。例えば年率12%の貯蓄率に対し、年率2%成長している国の資本所得率は長期的には600%(長期に亘りストックされた資本が、1年の国民総所得の6倍ということを示す)になるということです。つまり、より多く蓄え、よりゆっくり成長する国ほど、長期的には資本所得率は高くなるということです。この法則は、過去の長期間のデータから導かれた法則で、一定の状態(s/g)が長期間続くと(β)になるというものです。


【二つの法則の結果からピケティが言いたいこと】


 ピケティは、膨大なデータにより『r>g(資本収益率>GDP成長率)』(rが税前だと完全に成立。rが税引きだと一時的に成立しない時期がある。)という不等式を導き出し、それを歴史的事実としています。rは資本所得の伸び率、gを労働所得の伸び率を示す指標として使っています。つまり、世界的に、格差拡大は縮小することがないとの結論に至るのです。


 加えて、二つの法則から、成長率(g)が長期的に低下(現在の3.5%⇒21世紀末1.5%)し、貯蓄率(s)がほとんど変化しないことが統計的に算出される結果、資本所得比率(β)が大きくなり(21世紀末700%)、世界全体での資本所得と労働所得の格差拡大に拍車がかかるとしています。


 ピケティは、格差拡大を是正のため税制の活用を言いますが、これには様々な意見があることでしょう。


 


■      21世紀に生き残るには(むすび)


 ピケティが指摘した重要な点は、社会的格差が今のままでは、さらに大きく広がって行くことを、膨大なデータで示したことに有ります。


 このような現象に対し、世界は、政治においても、個々の企業においても適切な手を打っていくことを要求されます。事実パナマ文書で明らかになった、企業や個人の税逃れの動きを、世界レベルで防止しようといった動きも出ています。


 この様な21世紀に、企業が生き残っていくための経営はどうあるべきなのでしょう。一言でいうと「インテグリティ・マネジメント(Integrity Management)」つまり字の通り「誠実性・倫理性の高い経営」をすることに尽きると思います。


 つまり、個々の企業経営において、格差を無くそうとする新たな社会ルールには、高潔な姿勢でサポートする。また、個々の企業のステーク・ホルダーから『一番大切にしたい会社』と思われる倫理性の高い企業価値を創り出していく事ではないでしょうか。


 その様な経営をすることによって、個々の企業の持続的成長が維持されるのではないでしょうか。



【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。


 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


  http://sakai-gm.jp/


 


【 注 】


 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。


 


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2017年03月28日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日本人として知っておきたい『崩れる世界秩序』

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日本人として知っておきたい『崩れる世界秩序』



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■      今日のおすすめ


 『日本人として知っておきたい「世界激変」の行方』


(中西 輝政著 PHP新書)



■      湾岸戦争に始まった『アメリカ「一極体制」』崩壊の行き先(はじめに)


 2016年6月のイギリスのEU離脱、ロシアのクリミア併合に続くシリアにおける代理戦争、2010年のアラブの春以降の中東の混乱、世界各地で起こるイスラーム原理主義者のテロ事件、中国の南シナ海の領有権に対する強権的主張など、「世界の平和と安定」「自由」「人権」「法の支配」と言った普遍的理念に逆行する事件が多発し、将来への不安と不透明感が高まる中、普遍的理念を代表するアメリカの大統領に「アメリカ ファースト オンリー」を主張するトランプ氏が1月20日大統領に就任しました。


 アメリカ「一極体制」が崩壊する行先には、どのような世界があるのだろうと多くの人は将来の不確実性に頭を悩ませているのではないでしょうか。


 ところが、紹介本の著者中西輝政氏は、25年前からこの時代を予想し主張していたというのです。25年前の著者の主張は次の5つのトレンドでした。①中東情勢の不安定化によるテロの多発、②ロシアの民主化の失敗と強硬な反西側的存在になる、③中国経済が豊かになるほど軍事大国化し日本にとっての安全保障上の脅威となる、④アメリカの衰退と覇権国から徐々に遠ざかる、⑤ヨーロッパ統合の失敗、の5つでした。


 25年前から2015年位まで、大学でこの話を学生にすると、賢い学生程立ち上がって、教室から出ていったそうです。著者の主張が注目されるようになったのは、トランプ氏がアメリカの大統領選挙に勝利してからです。


 著者は主張します。『25年前の予想が全て当たったと、少しも自慢したくない。予想のような世界になってほしくないと、心底思っていた。しかし予想のようになることは「見えすぎるほど見えていた」』と言います。


 著者にとって「見えすぎるほど見えていた」のは、紹介本に書かれているように、第一次世界大戦後今日に至るまでの世界の歴史的事実を冷静に分析し、その先にあることを予測すれば、自ずと結論が出てきたことを指しているのだと思います。


 「見えすぎるほど見えていた」詳細は紹介本を読んでください。「目から鱗」のようにアメリカの一極体制崩壊後の世界が見えてきます。


 何か暗い気分になりがちな私たちに、著者は次のような希望を与えてくれます。 『今は、「安定した持続的世界秩序の定着」に向けたスタートだ』と。



■      「日本人として知っておきたい」こと


【「中露同盟」的接近を知らない日本人が多い】


 2016年6月ウズベキスタンの首都タシケントで開かれた、上海協力機構(SCO。中国、ロシア、ウズベキスタン、タジキスタン、カザフスタン、キルギスなどが加盟)の会議後、北京に場を移し、習・プーチン会談で「お互いの核心的利益を支持」を表明する「中露同盟」と評してよいほどの接近を見せ、「対米対抗関係」を強めた。この「同盟」ともいえる接近は、これからの世界秩序を大きく変える兆しと著者は見ています。


【トランプ大統領就任後イギリスのメイ首相と最初の首脳会談は当然】


 イギリスとアメリカの関係は従来から「血の同盟」と言われるほど緊密であり、第二次世界大戦にアメリカを引き入れたのもイギリスであり、種々の思惑の中で、アメリカ中心で運営するNATOもイギリス・アメリカが中心となって運営してきました。これからの世界秩序を考えた時、米・英の関係は世界秩序を作るうえで、大きな存在感を持つと著者は主張します。


【ドイツがロシアに接近する悪夢と中国と手を組む恐怖】


 ドイツとロシアは経済的関係で共通の利害を持ち、メルケルとプーチンは通訳なしで会話できる中であり、歴史的にも両国の関係は深い。今後のドイツとロシアの接近は、世界秩序の観点から注視する必要があると、著者は指摘します。ドイツと中国の関係も注視する必要があると著者は指摘します。「AIIB」「一帯一路」などで世界進出を狙う中国とドイツが手を組むことで、中国の思惑が現実味を帯びてくると著者は指摘します。 



■      「日本人よ目覚めよ」と著者は言う(むすび)


 「安定した世界秩序の定着」に向けてスタートした混迷の時期に、著者は日本人に向かって次の五つの点を主張します。


 『「一極として立つ」「大きな底流を早く見つける」「しっかり準備して、できるだけゆっくり行動する」「交渉事は常に粘り強く主張する」「大きなものが動くところでは、あるところで潮目を見て潔く譲歩する」』


 これは、日本の企業経営者と日本の政府に向かって言っていることです。私のブログを読んだだけでは、5つの主張の必要性が、分かりにくいと思います。紹介本を是非読み、理解してください。これからの世界と日本の先行きを読むうえで大いに参考になると思います。


 ところで、この3月1日、ユンケル欧州委員長が「EU再建に向けた白書」を公表しました。この白書には5項目のシナリオが示されていますが、その中の一つに紹介本が指摘していると同じことが示されています。それは、「EUは単一市場の完成だけを目指す」「その他はEU加盟各国の主権に任せる」というものです。これなら英国も飲めそうですね。


 いずれにしても大きな転換点に来ていることは間違いありません。


 


【酒井 闊プロフィール】


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【経営コンサルタントのプロ集団+育成と資格付与】



 日本経営士協会は、ご存知かと思いますが、戦後復興期に当時の通産省や産業界の勧奨を受け、日本公認会計士協会と母体を同じくする、日本で最初にできた経営コンサルタント団体です。


 詳しくは、サイトでご覧下さい。 

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2017年02月28日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日本の論点2017~18

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日本の論点2017~18


本


 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


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■   今日のおすすめ


 『日本の論点2017~18』(大前研一著 プレジデント社)



■     年初に当たりこれからの日本の論点を整理してみよう(はじめに)


 新しい年のスタートの時期に当たり、PESTに係る本をご紹介します。


 英国エコノミスト誌から、「現代世界の思想的リーダー」として、ドラッカー(故人)やトム・ピータースと共に名前が挙げられている大前研一が、プレジデント誌に連載している「日本のからくり」の過去1年分のストック及び特集記事から読者の反響の大きかった記事に、加筆修正して出版したのがこの紹介本です。



 トランプが大統領選を制した直前に出稿された本ではありますが、トランプが共和党候補として、民主党候補のクリントンと互角の選挙戦を戦っていたことから、そこにアメリカの右傾化、ポピュリストの台頭を見出し、併せて世界の右傾化を指摘している点は、先を読める大前研一ならではと思わせます。



 いずれにしても、2017年がどのような年になるのかを一言で表現するならば、「不確実性の年」と言えるのではないでしょうか。不確実性の時代を出来る限り正確に見通そうとするならば、いま世界で起こっていることの「メタ(一般的情報の背後にある、決断の根拠にできる事実情報)」を認識することです。


 その点で、本紹介本はピッタリと言えるでしょう。それは著者の豊富な経験と分析力によると思います。それでは、「日本の論点」の中から、これは注目に値すると思われるいくつかを次項でご紹介します。



■ 注目したい日本の論点


【巨大ビジネス創出!「アイドルエコノミー」】 


「アイドルエコノミー」のアイドルは「Idol」ではなく「Idle」即ち「働いていない」「使われていない」「空いている」を意味します。以下略。


【財政赤字の問題】
 著者は、アベノミクスの景気浮揚効果を阻んでいる一つの要因として、1300兆円の国家債務が国民の将来不安を生み、消費より貯蓄という行動を生んでいると指摘します。以下略。


【その他の「論点」】
 上記以外にも「イタリアの地方創生法」「蔡英文台湾と中台関係」「世界を席巻するポピュリスト旋風」等、大前研一流の知見と深い洞察力で書かれている「日本の論点」が多く掲載されています。詳しくは紹介本をお読みください。



■ 2017年は世界に向けて感性の高い情報アンテナを張ろう(むすび)


 著者は、読者に向けて、『ビジネスパーソンとして、「世界経済を自分の肌感覚でつかめる」ようになるには、NHKBS1の朝4時から7時までの「ワールドニュース」を見るだけで、1年後には相当力が付く』と勧めています。朝の苦手な人は録画しておけば時間の空いた時に見ることが出来ます。確かに海外放送局の放映をダイレクトに見ることは、国内ニュースでは得られない新たな情報が入ってきます。


 不確実性の時代に「メタ」を得ていく具体例として、「ワールドニュース」のお話を紹介しましたが、感性の高いアンテナを張りめぐらし、そこから得た情報を生かしながら、企業経営に係るビジネスに生かしていく年にしたいですね。



【酒井 闊プロフィール】


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2017年01月24日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】士業のビジネスモデルを考察

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】士業のビジネスモデルを考察


本


 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


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■      今日のおすすめ


 『コンサルタントの教科書』(和仁達也著 かんき出版)



■      年間報酬3千万円越が10年続くコンサルタント(はじめに)


 紹介本の表題の添え題として書かれているのが「年間報酬3千万越が10年続くコンサルタント」です。それは大手コンサルティング・ファームの話ではなく、独立系個人コンサルタントの話です。報酬に関して言えば、個人コンサルタントの場合の一番の壁は、時間に限りがあることでしょう。しかし、著者は、その時間の壁を越え、「年間報酬3千万円の持続安定的コンサルタント」を実現しました。自身の実現プロセスを記述したのが紹介本です。


 私の感覚では「個人コンサルタント年間報酬3千万円」なんて別の世界の話ではと思いましたが、新年に当たり、初心に帰りコンサルタントの在り方を考えてみたいと思い、紹介本を読んでみました。


 そこに大切なヒントがありました。それは一言でいうと、クライアントのビジネスモデルについては一生懸命考えても、自身のコンサルタント業についてのビジネスモデルについては真剣かつ戦略的に考えていなかったことに気付いたのです。


 紹介本には、独立系個人コンサルタントにとって、あるいは士業(税理士、司法書士、弁護士など)をクライアントに持ったコンサルタントにとって、参考になるヒントが、著者自身の体験談として語られています。


 紹介本の中で語られている、著者の体験談の中から、いくつか参考になるヒントを次項でご紹介します。



■      持続的な安定報酬を得る為のコンサルタント・ビジネスモデルのポイント


【コンサルタント・ビジネスの4つのモデル】


 著者は、コンサルタント・ビジネスを①プロジェクト型(問題解決型。3か月から1年以内係る。)②アドバイス型(解決すべき課題達成型。1年以上係る。)③ワークショップ型(ビジョンにフォーカスしたセミナー型。1日~数回のビジョン、目標策定セミナー。)④パートナー型(ビジョンにフォーカスして1年以上の長期で係る。)の4つにまず区分します。その上で、縦軸に「契約期間の長さ」、横軸に「フォーカスポイント(問題点⇔ビジョン)」のマトリックスを作り、①~④を配置します。


 著者は①~③のどの型が良いかの正解はないと言います。しかし、マトリックスの一番上位(契約期間が長く、ビジョンにフォーカス)に来る「④パートナー型」に、①~③を入り口にして、持っていくことが大切と主張します。


① ~③の入り口がなく、最初から④のパートナー型に持っていくのは難しいと思い


ますが、パートナー型に持っていく展望を持っていることは、大切なポイントと思います。


【パートナー型コンサルタントは社外のNO2を目指す】


 著者は、パートナー型コンサルタントは、組織外に居ながら、クライアントの組織のNO2の役割を果たすことと位置付けます。


 現実にそれが可能になることによって、クライアントにとっての利用価値が上がり、成果にも繋がることになります。それによって、契約の長期化と、高い報酬を実現することが出来ると著者は主張します。


 組織外に居ながらクライアントの組織におけるNO2であることには、大きな意味があると私は思っています。組織内の幹部・従業員に話せないことの相談相手になる、また、組織外のNO2だから出来る提案、アドバイスも多くあります。組織外NO2の立場だから、トップと従業員のコミュニュケーションを図ることも出来るケースがあるでしょう。


【コンサルティング技術に関する貴重なノウハウ】


 紹介本には、著者の体験に基づく貴重なノウハウもたくさん書かれています。その中のいくつかをご紹介しましょう。


 まずは、相手のニーズを引き出す技術。「社長これだけ順調にいっていると悩みなんかないですよね?」と質問すると、必ず「いや実は」と言って、社長の悩みごとの独白になると著者は紹介しています。


 次は相談に乗るときの場づくり。相手との間に「安心安全ポジティブな場」を作ることが大切と著者は言います。それには「相手をやる気にさせる言葉使い」と「相手に恥をかかせない言葉使い」が大切と説きます。


 他にも色々と参考になる著者独自の体験談が出てきます。詳しくは紹介本をお読みください。



■      独立系個人士業が持続安定的に成長するには(むすび)


 紹介本を読んで痛感しているのは、私たち独立系個人コンサルタントが、クライアントに語っていることが、自分自身の事業でも出来ているかということです。


 まずは「ミッション」を持つことでしょうか。それは自身の人間性に基づいたものでなくてはなりません。それがクライアントから受け入れられるか、事業を進める際の連携パートナーから受け入れられるか、それによって自身の事業の成否が決まってくるのではないでしょうか。


 次は「ビジョン(自身の事業でどのようなポジションを築きたいか。その為にいつまでに何をするか明確にする。)」を持ち、それを更新していくことでしょうか。自身の「ビジョン」が有ることで、自身の日々の行動が意味の有るものになって来るのではないでしょうか。



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2016年12月27日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】第二次冷戦と第三次世界大戦

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】第二次冷戦と第三次世界大戦



 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


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本


■      今日のおすすめ


 『中東複合危機から第三次世界大戦へ(イスラームの悲劇)』


(山内 昌之著 PHP新書)


 


■      「第三次世界大戦」の表題にひかれて紹介本を手にする(はじめに)


 最近の私たちの脳裏をかすめる将来の不安を抱かせる世界の事件には、中東にその源を発するものが多いと思います。今から約1年前の2015年11月13日、パリに於いてISによる同時多発テロがあり130名余りの死者を出したことは記憶に新しいですね。このテロ攻撃をローマ法王は「まとまりを欠く第三次世界大戦である」と表現しました。


 著者は、この法王の表現を「これまでの戦争とは異質ながら、世界大戦へ発展する広がりを持った歴史的事象として捉えている」と評価し、それを裏付ける事実をもって検証しようとしたのが紹介本です。著者は、その裏付けの事実を究明する中で、その複雑さを改めて認識し、それを「中東複合危機」と表現しています。特に、シリアの情勢を分析しながら、「第二次冷戦」情勢を見出し、「中東複合危機」と「第二次冷戦」の結合した先に、従来とは異質な「第三次世界大戦」が見えてくるとしています。勿論著者は発生を回避すべきと訴えますが、残念ながら現時点では、著者も、回避策に確信を持てていません。


 私達は、所謂「トンネル史観」ではありませんが、嘗て、古代や中世において、ヨーロッパとアジアを交易で結び付けていたアラビヤ半島や「肥沃な三日月地帯(北エジプト、パレスチナ、シリア、レバノンイラク、イランなど)」に余り関心を持っていませんでした。しかし今はその中東地帯が、世界情勢を象徴的に表す場所となっています。


 見過ごしてはいけない世界情勢の流れとしてその一部をご紹介したいと思います。


 


■      中東複合危機と「第二次冷戦」「第三次世界大戦」


【中東複合危機】


 著者は、中東の秩序は、2014年(ISの国家樹立宣言)以前には戻らないとしています。ヨルダン国王アブドゥッラー二世が著者の質問に答え、「IS掃討には10年かかる」と述べたことを紹介しています。イラクとシリアはスンナ派アラブ地域、クルド人地域、イランに支援されたシーア派アラブ地域、シリアとイラクにまたがるISと4つに分かれ、事実上の国家の解体(アナーキー化)に向かっていると指摘します。


 更に、著者は、トルコの民主主義の没落に代わる「イスラーム=トルコ権威主義」の出現、ロシアの権威・威信を高めるためのシリア戦争の「自分の戦争」化、EUを中心として異宗教・異文化の摩擦や衝突を内包した「中東欧州複合危機」に発展しかねない「難民問題」、「アラブの春」から5年を経て破綻国家や分裂国家の増加に伴うIS現象の拡散など、「中東複合危機」の複雑化・拡散を指摘しています。


【第二次冷戦】


 著者は、「新たな冷戦(第二次冷戦)」という概念を「中東複合危機」の情勢分析に導入しています。中東に限れば、ロシアとイランの動きが該当するとしているのです。ロシアはクリミア半島への執着に始まり、シリア戦争を中東における失地回復と位置付けていると指摘します。イランは、シリア戦争を機に湾岸諸国のシーア派多数派地域への野心を覗かせていると指摘します。


 著者は、第一次冷戦はイデオロギーの差異を基本にする国家間のブロック対立を特徴としていたが、第二次冷戦は、米欧や日本の考える「領土主権の不可侵・係争地の平和的解決・海洋通行の自由など」を否定し、「戦争の勝者が果実として領土や資源を獲得する」クラウゼヴィッツの「戦争論」的考えでブロックを構成していこうとしていると指摘します。このような「第二次冷戦」の兆候を「中東複合危機」の中に見出せるとしているのです。(第二次冷戦国家としては、国際法を無視して海洋進出を進める中国も加えて挙げています。)


 著者は、この第二次冷戦的な要素と、次に述べる「ポスト・モダン型戦争」要素が結び付き、「従来の戦争とは異質な『第三次世界大戦』」の道へ導くと説くのです。


【第三次世界大戦】


 著者は、「第三次世界大戦」の前触れとして「ポスト・モダン型戦争」という概念を持ち出します。それは、自由や人権を基礎とした市民社会や国民国家を尊重するモダン(近代)の原理(モダニズム)を否定しながら、カリフ国家やシャーリア(イスラム法)の実現というプレモダン(前近代)の教理を主張するISが、シリアという領域を超えて各種のテロを世界各地で起こしている事実が「ポスト・モダン(後近代)型戦争」の象徴であると指摘しています。加えて、これはムスリムと非ムスリムの「十字軍戦争」「反十字軍戦争」といったプレモダンからモダンにかけて通俗的に理解される事象ではないと指摘します。各地のテロで見るように、無差別大量殺人を公然と行い、テロの質・量を大きく変化させた点で、「ポスト・モダン」特有の「戦争」と理解すべきであると指摘するのです。


 著者は、ISが開いた「ポスト・モダン型戦争」は、米欧に生まれた若者が受けた就職差別や人種偏見に起因する社会的不満を基盤にしていることは間違いないと指摘します。


 将来、世界の社会・経済状況の推移により、社会的不満が増大し、「ポスト・モダン型戦争」が増加し地域的に拡大するならば、その先には『まとまりのない第三次世界大戦』が見えてくると著者は指摘します。


 


■      世界は不確実性の時代に突入している(むすび)


 この記事を書いている最中に、アメリカの次期大統領がトランプ氏に決まりました。「アメリカファースト」が進むならば、モダニズムは更に後退する可能性があります。まさに世界は不確実性の時代に入ったとみるべきでしょう。


 この様な難しい時代にこそ、私たち企業経営に係る者にとっては、正確に事実のメタを読み、先行きを正確に見通してくことが必要になると思います。


 


【酒井 闊プロフィール】


 


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 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


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2016年11月29日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「IS内部」命を懸けた取材

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「IS内部」命を懸けた取材


メモ


 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。


【 注 】


 今月は、通常の第4週ではなく、第5火曜日にお届けしています。



■      今日のおすすめ


 『「イスラム国」の内部へ』


(ユルゲン・トーデンヘーファー著 津村 正樹他訳 白水社)



■      西側のジャーナリストとして「IS」を生きて出国した最初の人(はじめに)


 著者は、ドイツで裁判官として勤めた後、CDU(キリスト教民主同盟)の国会議員を経てジャーナリストに成ったドイツ人です。彼は裁判官の経験を通して『真実を求めるには、常に双方との話し合いが必要になる。それは、世間が一定の判断を下した事項についても必要である』との確信を持つに至ったのです。ジャーナリストに成ってからもこの確信の下に活動します。アフガニスタンのタリバンの指導者、大統領のカルザイ、シリアの大統領アサドその他多くのテロリストの指導者、体制派の指導者と会い、紛争の仲介を試み、また多くの著書を出し、その収益金は、アフガニスタン、イラン、イラク等で戦争の犠牲になった子供たちのために寄付をしています。「テロリストの友人」「アサドの友人」「理想主義的風変わりなジャーナリスト」等のレッテルを張られながら、『真実を求める確信』を貫いて活動しているジャーナリストです。


 著者は、『「IS」は「一度決めたら一般市民を殺すことすらも残酷に行う執り行う者たち」なのだろうか』という疑問をぬぐい切れず、「IS」の内部に入り、「IS」幹部、戦闘員、IS支配地内の住民と話し合い、事実を確認しようと動き始めるのです。


 詳細のプロセスは省略しますが、ついに「IS」のカリフ(カリフ国事務局)から、『「IS」内の「旅行許可書(生命保証書)」』を入手します。著者は、この証明書が真正のものか、本当に生命が保証されるのか疑念を持ちながら、「許可証」発行の仲介者を信じ、息子のフレデリック(撮影担当)、とその友人(記録担当)を同行し、「IS」内に入って行きます。


 「IS」は、なぜ「許可証」を出したのでしょう。紹介本から読み取る限り、「著者のIS内旅行を認めなければ、ISの信用に影響する」と考えたのでしょう。それ程、著者の世界的な信用の高さが窺われます。


 さていよいよ著者は、「IS」内に入り10日間の旅をします。その間、計画していた通り、「IS」幹部、戦闘員、IS支配地内の住民など様々な人々と会話をします。息子のフレデリックが「シャーリア(イスラム法)に触れるからやめなさい」と忠告する内容の質問さえもしたのです。


 10日間の旅を無事終え、ドイツに戻ることが出来た訳ですが、著者は従来の姿勢を崩さず、『「IS」内で得た「事実」』と『「IS」共同体の最高の規範である「コーラン」と「事実」』との違いを17項目に纏め、『イスラーム国のカリフと外国人戦闘員への公開書簡』として手紙にしたため、カリフ宛てに出したのです。それが紹介本として発行されたのです。ドイツではベストセラーとなっています。


 17項目の内、特に重要と思われる項目を次の項と結びの項で紹介しましょう。



■      「IS」が意図して広めた野蛮性の精神は「コーラン」の何処にもない


【「宗教的寛大さ」がない】


 著者は、「書簡」にこう綴る。『貴方がた(カリフ及び戦闘員)は、人が、シーア派、アラウィ―派、ヤズイード教徒、民主主義に親しみを感じるスンニー派という理由だけで、残忍に殺害しています。しかし「コーラン」には宗教的問題における強制を禁じています(コーラン第2章256節)。宗教的寛大さは、何世紀にもわたってイスラーム支配者達が最も称賛を受けた徳の一つです。敬愛するカリフよ、どこにあなたの寛大さがありましょうか。』


【「侵略戦争」に対しコーランは禁止している】


 著者は、「書簡」にこう綴る。『預言者(ムハマンド)は決して侵略戦争を行いませんでした。彼はいつも攻撃を受けるばかりでした。ところがカリフのあなたは、あなたに対して何もやっていない、すべての地域、町や村に傍若無人に襲いかかっているのです。(不当な目に遇わされた者が、相手に敢然と挑みかかるのは、〈アッラー〉のお許しが出る〈コーラン22章39節〉。)』


【汝、人を殺すなかれ】


 著者は、「書簡」にこう綴る。『そして、この章が、あなた(カリフ)が最も罪を犯した箇所である。誰かが一人の人間を殺せば、それは人類全体を殺したようなものである。誰かが一人の人間を救えば、それは人類全体を救ったようなものである(コーラン5章32節)。その命を神が不可侵とされた人間をだれ一人殺すなかれ(コーラン6章51節)。』



■      「書簡」における著者の最後の結び(むすび)


 著者は、書簡の最後に次のように綴ります。『あなたの手厚いもてなしに改めて感謝いたします。あなたが支配している国を比較的自由に訪問する機会を与えてくれたことに感謝します。私はいつの日か、本物のイスラーム国を訪問できたらと思っています。その国は西側諸国の不正行為や思い上がりに対して泰然と抵抗できるでしょう。結局ある一つの反イスラーム国しか知ることが出来なかったことは極めて残念です。』



【酒井 闊プロフィール】


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2016年10月25日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】マッキンゼーの「47原則」良きリーダーになるノウハウ

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】マッキンゼーの「47原則」良きリーダーになるノウハウ



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■      今日のおすすめ


 『47原則-THE McKINSEY EDGE-』(服部 周作 著 プレジデント社)



■      良きコンサルタント、良きリーダーになるには(はじめに)


 紹介本は、著者がマッキンゼーに勤務した時の経験から、良きコンサルタント・良きリーダーになる為のノウハウは何かを、日々の活動の中で実施した有益なノウハウを、現場でメモをし、後で別のノートに整理したものの中からベスト47原則を選び、著書にしたものです。


 内容的には、普遍的と思われるものと、マッキンゼーに特有のものとに分かれると思います。47原則の中から普遍的と思われるベストスリー・原則を次項でご紹介します。皆さまのベストスリーと私の選んだベストスリーは違うかもしれませんね。皆さまが選ぶベストスリーはどれですか。



■      「47原則」の中から、私の選んだベストスリーはこれ!


【感謝の気持ちを言葉と態度で表す】


 47原則の27番目は、「メンバーはリソースではなく〝頼りになる個人〞と考える」という表題になっています。そのために次の4点が大切と述べています。①「レバレッジする(活かす)という意識を持つ:②辛い仕事を率先してやる:③メンバーに、「自分しかできない」ことをしてもらっているという気持ちを持たせる:④感謝の気持ちを言葉と態度で示す:


 著者のケースは、組織の中で、チームを組んだ時のケースとして書いています。リーダーとしての謙虚な態度、判っていても実際に出来ていますか。


 この原則は、コンサルタントがクライアントのファシリテーターとしてその機能を有効に果たすときにも、使える原則ですね。


【自分から話すより、聞き役に徹する】


 47原則の中の19番目がこの原則です。この原則は、皆さん〝その通り〞と思われるでしょう。しかし良い結果を出そうとすると、それなりの意図を持って臨まないと理屈だけで終わってしまいます。著者は優れた聞き手になるコツとして、次の3点を挙げています。①話題をコロコロ変えないこと。相手の話に心から興味を示し、掘り下げて!:②自分の無知を素直に認めること。知らないことがあれば、ためらわず認めよう。:③興味深いポイントを瞬間的にとらえ、簡潔な言葉でフォローアップしよう。


 どうですか3つのこと出来ていますか。これが出来るには、相手のことについて事前にしっかりと調査・研究をしておくことが大切でしょうね。


【ノーの代わりにイエスを使う】


 これは20番目の原則です。これも皆さん〝その通り〞と思われることですね。私は、 先輩から、〝クライアントの提灯持ちになるな〞と教わってきました。〝イエスを使おう〞ということと、〝提灯持ちになる〞ということとは全く違います。明らかにクライアントが間違ったことを言ったとき、〝なるほど〞と相ずちを打った後、何と言ったらよいのでしょう。著者は、「提案型の質問」をしなさいと言います。


 「提案型の質問」をし、いい流れを作れると思います。しかし、このいい流れを作るには、相手のことについての事前の調査・研究が大切なことは、皆さんもイエスと言って下さるでしょう。



■      「47原則」の教えること(むすび)


 「47原則」も参考になりますが、トータルとして著者から何を学ぶべきでしょう。それは著者も言っています。「自分の知識には限界がある」ことを認識し、「その限界を広げるため学び続ける」ことが必要と。更に「学んで思考し、思考して学ぶこのサイクルの繰り返しに楽しくなろう」と言います。加えて、そのサイクルを「書いたもので残そう」と言っています。


 エンドレスですね。でもこれが楽しくならないと、良いコンサルタント、良いリーダーにはなれないですね。そうです、楽しみながら仕事ができるなんて、なんと幸せな事でしょう。でもこれは苦しみに挑戦し、乗り越えていく中で得られるものです。頑張りましょう。



【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。


 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


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2016年09月27日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】必読!統計で見る日本の針路

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】必読!統計で見る日本の針路



 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


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■      今日のおすすめ


 『数字・データ・統計的に正しい「日本の針路」』


(高橋 洋一著 講談社+α新書)



■      目からうろこ「統計的に見る日本の針路」(はじめに)


 紹介本の著者は自らを「数量分析家」と称しています。経営分析でも、統計や関数を使って分析すると、従来の方式によるものと異なる解が出て、新たな発見をすることがあります。著者は「日本の針路」を、世界中のデータを使い、統計・関数的に分析しその結論を示しています。


 著者の示す結論の中には、既成的考えを覆す、新たな知見を示しているものがいくつかあります。その知見は、世界情勢を踏まえつつ、これからの日本の政治・経済を正しい方向に導くための重要な鍵となるものであり、又日本の将来に希望を持たせるものです。そのいくつかを次項でご紹介しましょう。


 なお、紹介本は「現代ビジネス」連載『高橋洋一「ニュースの深層」』のコラムから特に反響のあったものに加筆修正したもので、時の経過によりコラム記事の結果が出たものもありますが、データ・統計・関数的分析により結論を出すプロセスは、これからも十分通用するものとして興味深く読むことができます。



■      えっ!と驚く新たな知見〞の一部をご紹介します


【日本の借金1,000兆円はウソ】


 私は、従前から財務省が国内に向けては「(消費税増税の)国際公約を守らないと国債が暴落する」といい、海外に向けては「日本の国債は安全」と宣伝する、いわゆる二枚舌を使っていることについて疑念を持っていました。海外に向けて言っていることに真実があるのではと思っていました。


著者の、日本の財政に対する分析、分析に基づく結論に「やはりそうだったか」と納得しているところです。著者は「ある意味で財政再建が完了したとも言えてしまう」と記しています。


著者が論拠としているところは、日銀も含めた連結ベースでは(平成27年12月現在)、概算で(国の借金の数字が2013年度までしか公表されていないため)、ネットの国の借金は150~200兆円まで圧縮されていると分析している点にあります。


これでいくと、国のネット借金のGDP比率は30~40%となり、同じベース(ネット国債)で数字のとれるイギリスやアメリカ(GDP比率80%~60%)と比較し、著者は、「日本の財政が危機的だという論がいかに滑稽か、よくわかるだろう」と記しています。


何故この様な状態が存続しているかについて、著者は、「(財政の貸借対照表の資産の部の中身を見ると)貸付先や出資先に、財務省所管法人が他省庁に比べいかに多いかがよくわかるだろう。天下り先を確保しているのだ。」と記しています。 


このように見てくると、残念ながら国をはじめとし、構造改革に手がついていないと言わざるを得ません。ここまでの著者の結論に至る詳細なデータは、紹介本をぜひお読みください。(高橋論に対する反論も多いですが、高橋論のポイント・核心は日銀も連結対象に含めた点です。この点は、日銀法の改正やハイパーインフレを起こさないための政策論等に論点が広がりますが、ある意味では画期的・発展的な考え方と私は思います。)


【政府の掲げる「名目GDP600兆円」は根拠がある】


 著者は、2000年代の世界の先進国のインフレ率と名目GDP成長率の数字を集めた散布図から名目GDP成長率(Ⅹ)の回帰直線式(Ⅹ=1.2+1.2×インフレ率)と相関係数0.69の解を得ています。


著者は、この回帰直線式のインフレ率に3%を入れると名目成長率は4.8%になり、これが3年強続けば、日本の名目GDPは600兆円に達すると説きます。日本のGDP600兆円の達成にはインフレ率3%達成が必須と説くのです。そのために金融・財政政策、消費税10%への引上げ策等を、どの様に組み合わせて行うかが鍵となると説くのです。


どうですか、日本の名目GDP600兆円は政策次第で実現すると思いませんか。



■      「日本と世界の針路」のシナリオを描いてみませんか(むすび)


 皆様がお持ちの知見と紹介本の知見を活用し「日本と世界の針路」のシナリオを描いてみませんか。どのマーケットを狙うのか、持続的成長を成し遂げるために何をしたらよいのか、答えが出てきそうですね。



【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。


 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/index.html


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【 注 】


 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。



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2016年08月23日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】インテグリティマネジメント

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】インテグリティマネジメント

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

■      今日のおすすめ

 『インテグリティマネジメント』

(新日本インテグリティアシュアランス(株)著 東洋経済新報社)

 

■      「インテグリティマネジメント」知っていますか(はじめに)

 私は、かつて、「『いい会社』とは何か」(小野泉-古野庸一著 講談社現代新書)を読み、今でも何かの時に参考にしている「持続的成長を促す75の経営要素(株価上昇率-1974~2008-上位50社の経営要素分析・抽出)」があります。75要素の中で唯一理解できなかった要素が「インテグリティ」でした。Amazonで検索すると唯一紹介本が出てきました。紹介本によれば、『「インテグリティ(誠実)」「マネジメント」は、その言葉通り「誠実な経営」をすることを経営の理念として掲げる倫理性の高い経営を指す』と解説されていました。

 日本では「コンプライアンス(調和‐法令遵守)」という言葉で行き渡っています。日本の企業では、「コンプライアンス(法令順守)」を経営の柱に掲げながら、燃費データ不正事件、不正会計事件、杭打ちデータ不正事件、日常的な談合と「コンプライアンス」が絵空事になっている状況を身近に日常的に見かけます。

 『日本人の性格上、失敗(法令違反)の責任者を特定し、批判するのを好まない「ムラ的風土」がある』(日経4月24日「風見鶏」より抜粋)との指摘があるように、『「恥の文化」に基づく悪い意味での集団主義』の日本の風土の下では「コンプラアンス」の方が馴染みやすい「経営方針」なのでしょうか。

 「法令遵守」という点に焦点を当て、「コンプライアンスマネジメント」と「インテグリティマネジメント」の結果を比較するならば、前者は「形が法令と合っていれば、中身は法の精神に違背しても止むを得ない」という方向に行きやすいのです。後者は、「法の背景にある理念・精神は何か」「法令順守の結果がステークホルダーの期待に沿っているか」まで求めるのです。先ほど記しましたように、企業の大小を問わず、日本のかなりの企業の「法令遵守」は前者のレベルにとどまっているといっても過言ではないでしょう。

 皮相的な「コンプライアンスマネジメント」を掲げていた経営者が、「インテグリティマネジメント」を新たに掲げ、誠実に実行したら企業はどう変わるのでしょう。次の項で考えてみましょう。

 

■      「インテグリティ」と「コンプライアンス」では成果が大きく異なる

【「インテグリティマネジメント」と「コンプライアンスマネジメント」の違い】

 「インテグリティマネジメント」は、次の4つの責任レベルから成立ちます。   「①法規範レベル(法令・法規則)」「②社内規範レベル(社内諸規則、規定類)」「③社会規範レベル(企業倫理)」「④理想的規範レベル(経営理念・社是)」の4つです。①及び②までを対象とするコントロール(内部統制)は「狭義のコンプライアンスマネジメント」と称されています。①~③までを対象とするコントロール(内部統制)は「広義のコンプライアンスマネジメント」と称されています。①~④までを対象とするコントロール(内部統制)は「社会的責任マネジメント」と称されています。「④理想的規範レベル(経営理念・社是)」の責任とは、社会貢献、フィランソロピーなどによる企業の名声・評判を確保するための行動ではなく、「業界トップの品質」等といった「経営理念レベル」を意味します。

 つまり、「コンプライアンスマネジメント」と「インテグリティマネジメント」の違いは、企業組織が求める「達成責任レベル」の高・低と、経営者をはじめとする、企業組織の構成員の誠実性・倫理性の有・無にあります。単なる言葉の違いのみではなく、内容・成果に、大きな開きが出る「コンテクスト」の違いをご理解いただけたでしょうか。

【「インテグリティマネジメント」のコントロール(内部統制)は負担のない方法で】

 コントロール(内部統制)は、米国のCOSO( Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)及びその流れを汲むJ-SOX法(金融商品取引法第24条4の4の第一項「内部統制報告書」)のフレームワークに拠るか、5SやJISQ(ISO)に代表される日本的P-D-C-Aフレームワークに拠るかの選択があります。上場企業の場合は、金融商品取引法により、米国発のフレームワークに拠らざるを得ませんが、上場企業でなければ日本的PDCAフレームワークで、かつ、負担の少ない方法を選択して行えばよいのです。

 米国型が、ある時点での組織の活動をチェックする静的モデルに対し、日本型はPDCA(プロセスアプローチ)を繰り返す動的モデルです。日本型は「バリューチェーン」の付加価値を改善しながら、同時に「インテグリティマネジメント」の結果を出し、企業活動の成果を「経営理念レベル」として実現します。

 まさに、「インテグリティマネジメント」は持続的成長企業を育てる経営手法として、その意義を認めることが出来るのではないでしょうか。

 紹介本は、かなりのページをCOSOフレームワークの記述に割いております。米国発のフレームワークを使う必要のない読者は、流し読みをしてポイントのみ押さえて下さい。

 

■      インテグリティマネジメントで企業ブランドを創ろう(むすび)

 私は、「インテグリティマネジメント」を誠実に行っている企業を幾つか体験を通じて知っています。それらの企業は「あそこなら信頼できる」「あそこのサービスは安全で安心できる」等といったブランドを創り上げています。

 このようなブランドを創ることは、会社の大小に拘らず出来ることです。「インテグリティマネジメント」やってみませんか。

 

【酒井 闊プロフィール】

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2016年07月26日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日本人の強みが活きているか

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日本人の強みが活きているか

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

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■      今日のおすすめ

 『ハーバードで一番人気の国・日本』(佐藤 智恵 著 PHP新書)

■      日本がハーバード大学経営大学院の学生に一番人気があるって?(はじめに)

 私は、紹介本の表題をみて、「ほんとに?」「いま?」と思い、紹介本を手に取ってみました。日本の中で暮らしていると、ハーバードが日本人の何に関心を持っているか、日本人の価値が見えにくいですね。

 まずは、次の項で、ハーバードが日本人の何処に関心を持ったのか見てみましょう。

 

■      ハーバード大学経営大学院で一番人気のある日本人のケース・スタデイ

【新幹線お掃除会社「テッセイ」が与える驚き】

 「テッセイ」の親会社JR東日本から取締役経営企画部長として送り込まれた矢部さん。「あんなところに・・・」という会社に着任して、「テッセン」に「自分たち は所詮3kの清掃スタッフ」という空気が蔓延していることに気付きます。

 この「テッセイ」が『人のために役に立っているのが楽しい』『もっと早く綺麗に清掃するにはどうしたらよいか』と思う社員の集団に変わったのです。

 矢部さんは、まず社員の意識改革をします。「皆さんは世界最高の技術を誇る新幹線のメンテナンスの一部を、清掃という面から支える技術者なのだ」と繰り返し投げかけました。自席を事務所ではなく、現場の近くに置き、現場に頻繁に足を運び、自ら現場の一員となり、現場の問題を率先して解決する役割を引き受けたのです。社員は「自分が提案したことを実現してくれる」と次から次と新しい提案をするようになりました。このようにしてトラブルの「テッセイ」が、感動を与える「テッセイ」に生まれ変わっていきました。

 ハーバードでは、このケースを「自ら現場に溶け込んでいくリーダーシップ」と位置付け、サービス企業の世界標準として採り上げているのです。

【アメリカ人を驚愕させた「プロブレム・ファースト」】

 これはトヨタのケースです。日本人はよく知っている改善手法です。現場の改善をテーマにするコミュニュケーションの場では、「失敗」「問題」を先に発言するというルールです。まず自分の功績を主張するアメリカ人にとっては驚きでした。

 しかし、問題を解決するには「プロブレム・ファースト」が合理的であることに気づき、ハーバードでは、オペレーションの授業で採り上げているのです。

【ハーバードの方が知っている「福島第二原発」】

 福島第二原発は第一原発から12キロしか離れていません。地元福島の人は「福島原発」として一つで見ています。第一原発は6機(5,6号機は当日定期点検中であったため被害が少なかった。6号機の発電機は無傷であったため、5号機と交互に使用し冷却できた。)、第二原発は4機の原子炉があります。2011年3月11日第二原発でも第一原発の1号機から4号機と同じ状況が起こっていました。唯一違ったのは、第二原発では管理棟の外部電源が一つだけ残っていたことだけです。

 第二原発で、メルトダウンやベントの事態を回避できたのは、第二原発の増田所長の「センスメーキング(チーム全体での情報共有)」を伴うリーダーシップにあったことを、多くの日本人は知りません。

 しかし、ハーバードでは、増田所長の「Leadership・with・Sense making」がなければ、第一原発と同様の事態になっていただろうと、高く評価し、リーダーシップの授業で採り上げています。

 他にも多くの日本企業のケースが採り上げられています。詳細は紹介本をお読みください。

■      ハーバードで認められた日本人の強みを生かすには(むすび)

 紹介本の最終章には、日本人の強みと弱みが良く纏められています。

 強みとして上げられているのは次の6つです。①高い教育水準②分析的な特性③美意識・美的センス④人を大切にするマインドと改善の精神⑤環境意識と自然観⑥社会意識(合本主義)、の6つです。

 弱みとして上げられているのは次の3つです。①グローバル化の遅れ②イノベーションの創出の減衰③若者と女性の活用が下手、の3つです。

 これだけ多くの強みを持ちながら、持続的成長維持の要件である真のグローバル化が出来ている企業はまだ少ないと言わざるを得ません。特に中小企業が遅れているのではないでしょうか。真のグローバル化とはイコール海外進出ではありません。自社の製品やサービスを、グローバル市場と繋げる、「視点と行動」により実現できるのです。

 残りの2つの弱みも、その気があれば克服できます。「マインドと仕組み」を変える気があれば克服できることです。

【酒井 闊プロフィール】

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2016年06月28日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「生涯健康脳」を創る

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「生涯健康脳」を創る

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『生涯健康脳―こんなカンタンなことで脳は一生健康でいられる!―』

(瀧 靖之著 ソレイユ出版)

■      世界最先端の脳画像の第一人者が語る脳の話(はじめに)

 今回は、楽しい、役に立つ本をご紹介しましょう。「健康な脳」を創るお話です。紹介本で扱う脳は、「大脳(知覚、知覚情報の分析・統合等)」「小脳(運動機能と知覚の統合等)」「脳幹(神経系の中枢、自律神経機能等)」の三つの大きな区分の中の「大脳」(脳全体の体積の80%を占める)に焦点が当てられています。「良性健忘(もの忘れ)」や「認知症(脳の血管に生じる疾患やアルツハイマー病から引き起きる)」は「大脳」で起こります。

 「健康な脳」を創るお話に入る前に、いろいろな角度から脳の基礎的な知識について学んでみましょう。著者は中心となる「脳のMRI画像」のデータに「認知力」「生活習慣」「遺伝子」を加えた、四つの分野のデータを数千集め、現段階での研究成果を発表しています。「脳のMRI画像」のデータをベースにした研究では、著者が世界的な第一人者と言われています。

 「脳のMRI画像」をベースにした脳の基礎的な知識は、新しい知見がありとても面白いです。そのいくつかをご紹介しましょう。詳しくは紹介本をお読みください。

〔認知機能とネットワーク〕

 『脳を断面で見ると、表面に当たる「灰白質」と内部に当たる「白質」とに分かれ、「灰白質」は機能領域(言語力、論理思考力等)毎の神経細胞の集合で認知機能をつかさどり、体積が大きければ大きいほど、能力が高いです。「白質」は神経細胞と神経細胞をつなぐネットワーク組織の集まりです。脳は使えば使うほどその機能領域のネットワークを増やして、体積が大きくなります。』と著者は言います。脳は生まれつきの体積と、脳を使って増えた体積の合計なのです。

〔脳の中枢は「前頭葉」と「前頭前野」〕

 『「前頭葉」は、言葉を話す・コミュニュケーションをとる・思考する・意思決定をする・情動、行動を制御する・新しいものを創造する・記憶をコントロールする等人間として最も高度な働きをします。この働きは「前頭葉」の最も前にある「前頭前野」に集中しており、「灰白質」の全体の30%を占めます。「前頭前野」の大きさは、人間だけの特徴です。』と著者は言います。「前頭葉」は、‟おでこ”の部分ですね。

〔脳の自浄作用〕

 『アメリカのロチェスター大学で、脳細胞と脳細胞の間に脳脊髄液という液体が流れていて、眠っているときに脳細胞間の隙間が60%も広がり、髄液が速いスピードで流れて、排出される老廃物が増えることが発見されました。』と著者が指摘します。良い睡眠が脳を守るのです。

〔「海馬」の働き〕

 『「海馬」は記憶をつかさどります。「短期記憶」を一旦「海馬」に貯め、長期に亘って記憶する必要なものを「長期記憶」として保存し、必要な時に保存された「長期記憶」から引き出す能力を持つ、まさに「記憶の司令塔(ハブ)」』、と著者は指摘します。「海馬」は両耳側の部分(「側頭葉」の一部)です。

■      「生涯健康脳」は自分で創るもの

 著者が、「生涯健康脳」を自ら創る実証研究の結果を挙げています。その中からいくつかをご紹介します。

【「有酸素運動」が脳を活性化させる】

 「有酸素運動」とは、ウォーキング、水泳、ジョギングなどです。いくつかの研究機関で、有酸素運動を「するグループ」と「しないグループ」に分け、一定期間継続して研究した結果を見ると、「するグループ」では、脳の萎縮がストップするとか、「海馬」の体積が増えるという結果を得ています。「しないグループ」ではこの逆のことが起こっていると著者は指摘しています。一日30分のウォーキングで十分だと著者は言います。何とか続けたいですね。

【十分な時間と質の良い睡眠が脳を守る】

 前項で記しましたように、脳には自浄作用があります。それを効果的に働かせるのが、「十分な時間と質の良い睡眠」そして十分な時間は7時間と著者は言います。質の良い睡眠とは「ノンレム睡眠(眼球運動を伴わない深い睡眠)」を言います。簡単なようで、難しいですよね。ストレスで寝つきが悪い時も有りますよね。

 また就寝前の食事や、テレビ・パソコンなども、「メラトニン」という睡眠導入ホルモンの分泌を妨げるとして、就寝2時間前はこれらを避けるよう著者は指摘しています。これもなかなか難しいですね。遅く帰ったり、急ぐ必要がある場合など、思い通りにはいかないですね。しかし知識として持ち、できる限り努力するのは良いことですね。

【ストレスは「海馬」を委縮させる】

 長期間にわたって、ストレスを受け続けたりすると、脳の様々な部分特に「海馬」が委縮する研究結果が出ていると著者は指摘します。ストレスをコントロールする「コントロール・アビリティー」を強くしたり、ストレス解消法を身に着けることが大切です。

【「飲酒」は脳を委縮させる】

 『「飲酒」は、脳を委縮させることが研究結果として出ている。しかも残念ながら許容量はない。自粛すればするほど良い。』と著者は指摘します。お酒の好きな人には困った情報ですね。

■      「生涯健康脳」創りは今日からスタート(むすび)

 ビジネスの基本は、言うまでもありませんが、健康です。その中で、以外と日頃気を配っていないのが脳の健康ではないでしょうか。

 平均寿命と健康寿命の差(約10歳)の要因の40%は脳に係わる疾患と著者は指摘します。

 脳は「可塑性」、すなわち、前項で記しました「健康脳」創りをすれば、プラスに変化しますし、しなければマイナスに変化します。脳には、子供から高齢者まで年齢に関係なく、「可塑性」があるのです。

 健康で機能性の高い「生涯健康脳」を創り、益々ご活躍ください。今日からスタートしても遅くはありません。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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2016年05月24日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「ランチェスター戦略」の核

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「ランチェスター戦略」の核

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ


A;『ランチェスター戦略』 (編著:NPOランチェスター協会 中経文庫)

B;『社長のためのランチェスター式学習法』(著者:竹田 陽一 あさ出版)

C;『ランチェスター法則のすごさ』(著者:竹田 陽一 中経出版)

■      「ランチェスター戦略」の有用性は(はじめに)

 ランチェスター戦略は、近年ではソフトバンクの孫正義氏、H・I・Sの澤田秀雄氏等が創業時に経営に応用し、成長したことは良く知られていることです。彼らは、ランチェスター戦略のどこに有用性を見出したのでしょう。言い換えれば、紹介本のどこに焦点を当てるべきなのでしょう。以下で見てみたいと思います。

 ここで、一言触れておきたいことがあります。紹介本を三つ挙げました。こんなややこしいことをしたくないのですが、A紹介本(以下協会説またはA本という)とB、C紹介本(以下竹田説またはB、C本という)が、ランチェスター戦略の一番肝心な弱者戦略と強者戦略の定義あるいは解釈が異なるのです。協会も竹田氏もランチェスター戦略の第一人者とされる人(人々)です。ご判断は読者の皆様にお任せしますが、異なることだけは、知って置いて頂くと良いかなと思い、敢えて、二つの説の違いを以下でご紹介いたします。

■      「ランチェスター戦略」の核はここだ

【ランチェスター戦略で最も知られている「意味を持つ占有率」】

 世界で始めて、市場占有率(自社営業範囲内)とその占有率の持つ意味を具体的に示したのは、ランチェスター戦略を生み出した、「田岡、釜田理論」です。

 市場占有率とその意味を以下に記します(詳細、計算根拠はC本をお読みください)。

① ウルトラスーパー強者(A本では「上限目標値」):73.88%以上のシェアを有する。

② スーパー強者(A本では「安定目標値」):一位で、41.7%以上かつ二位との間に1.68倍以上の差をつけている。(73.88/26,1=2.83。2.83の平方根=1.68。2.83を第一法則〈一次法則:弱者法則〉下の射程距離、1.68を第二法則〈二次法則:強者法則〉下の射程距離と呼ぶ。射程距離以内だと市場の均衡を崩せ、射程距離を越えると市場の均衡を崩せないとするランチェスター理論の一つ。)

③ 強者(A本では「下限目標値」):一位で、26.1%以上かつ二位との間に1.68倍以上の差をつけている。

④ 中間者(A本では「上位目標値」):15,6%~26,0%

⑤ 弱者のA(A本では「影響目標値」):9.4%~15,6%

⑥ 弱者のB(A本では「存在目標値」):5.6%~9.4%

⑦ 弱者のC:3%~5.6%(A本では触れていない)

⑧ 番外(A本では「拠点目標値」):3%未満

 これらの占有率は各々自社の現状の力を現すと共に、次に狙うランク目標を示します。3%未満の番外は、市場から撤退すべきかどうかの判断をすべきポジションとされています。更に言えば、特定のセグメント(地域、商品、顧客等)に於けるシェアを念頭に置いたときに、これらの占有率は意味を持ってきます。

【ランチェスター戦略は弱者が強者に勝つための戦略理論】

 ランチェスター理論は元々弱者が強者に勝つための戦略論です。

 竹田説は強者の定義を上記①②③とし、それ以外は弱者とします。1000社の内「強者の経営戦略」を行える条件を満たしているのは0.5%、残り99.5%は「弱者の経営戦略」をとるべしとしています。「弱者の経営戦略」として、小さくてもナンバーワンになれる得意分野を見つけ実現する。そこを起点にし、ナンバーワンの領域を広げて行く13の戦略・戦術(いわゆる「差別化戦略」。細かくは、「①ナンバーワンになれる商品、地域、客層を探す②攻撃目標と競争目標の分離③差別化④小規模1位主義、部分1位主義⑤商品や営業の細分化⑥⑦⑧⑩一点集中⑨直接販売⑪軽装備・軽投資⑫継続性、ステップ・バイ・ステップ⑬自社の戦略情報の漏洩防止管理」をあげています。詳細はB本をお読みください。)を掲げています。

 一方協会説は、「弱者の戦略(差別化戦略)」と「強者の戦略(ミート戦略)」が並んで出てきます。「弱者の戦略」とは、弱者が自分よりもシェアがワンランク上の競争相手(頭上の敵)の市場を奪い、小さくともナンバーワンになれる得意分野を見つける戦略と言います。「強者の戦略」は弱者が自分よりもシェアがワンランク下の競争相手(足下の敵)の市場を奪い、得意分野がナンバーワンになるための基盤強化を図る補助戦略と位置づけます。「弱者の戦略(差別化戦略)」と「強者の戦略(ミート戦略)」を同時並行的に行うべしとします。(私にはその様に読み取れました。)

 経営資源の乏しい弱者が、二つの異なった戦略を並行的に行う戦略は現実的でしょうか。弱者はあくまで弱者として「差別化戦略」を実行すべしとする竹田説が「ランチェスター戦略」の基本ではないでしょうか。

 更に注目しておきたいことは、弱者は強者から第二法則(二次法則:戦力=質×兵力数の二乗)で攻められ、弱者が強者を攻めるときは、経営資源が乏しいので、第一法則(一次法則:戦力=質×兵力数)で攻めなければならないと言うことです。弱者が強者を攻めるには、2.83倍以上の力を集中して攻めなければ強者に勝てないというのが「ランチェスター戦略」の理論でもあることです。そこには「戦略・戦術」に加え、「物理的・時間的・継続的」努力がなければ、勝利は実現しないこと現しています。

【弱者のための代表的戦略「地域戦略」】

 A本では「ランチェスター戦略」の三つのキーワードとして①ナンバーワン主義②セグメンテーション③ステップ・バイ・ステップを挙げています。それを実現する代表的戦略として、「地域戦略」(あるいは「特定のセグメント戦略」と言っても良い)を掲げています。

 「地域戦略」で成功するための5つの原則を掲げています。参考に出来る内容ではないでしょうか。

① 一点集中の原則(一位になれる重点領域、エリアの決定)

② 足下の敵攻撃の原則(競争目標:頭上〈ランク上〉の敵、攻撃目標:足下〈ランク下〉の敵の中から攻めるライバルを絞り込む)

③ 地盤強化の原則(まずエリアをしっかり固める)

④ ナンバー・ワン・キープの原則(大口顧客やリーダー格顧客を確保する)

⑤ 固定化の原則(離脱客をなくし、リピーターを増やす)

■      「ランチェスター戦略」を経営に応用する(むすび)

 「ランチェスター戦略」の核は何かを見てきました。「ランチェスター戦略」はどちらかと言うと馴染の薄い経営戦略論ではないでしょうか。「ランチェスター戦略」の核の部分を押さえ、その核の理論とその他の経営理論を組み合わせて使うことで、経営に有用なツールとして使えるのではないでしょうか。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

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 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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2016年04月26日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日本企業はCSVで飛躍を

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】日本企業はCSVで飛躍を



 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。



■      今日のおすすめ


 『CSV経営戦略』(名和 高司 著 東洋経済新報社)



■      日本企業はJ‐CSV経営で飛躍しよう(はじめに)


 私は、昨年12月に著者の名和先生(一橋大大学院教授)の講演を聞き、「CSV」という経営戦略に改めて関心を持ち、紹介本を購入し研究してみました。特に、名和教授の提唱する「J‐CSV」に共感を覚えました。お話を進める前に、「CSV」とは何か、「J‐CSV」とは何かについて簡単に整理をしておきましょう。


〔CSVとCSR〕


 CSVはHBSのポーター教授が「共通価値の戦略(Creating Shared Value)」で提唱した「戦略論」です。その戦略のポイントは、社会的価値(課題解決)と経済的価値(利益)の双方を同時に求めることで、それぞれの共通価値の実現性、スピード、規模の大きさ、継続性を、成果として効果的・効率的に出せるとします。CSR(またはSR)は、ISO2600で代表される、持続可能な社会を実現するための「社会的責任」についての「手引き」と言っていいでしょうか。CSRは、やや極論ですが、儲けが出ている時だけ社会貢献するフィランソロピー的になってしまう可能性を持っているとします。CSVの方が、実効性・継続性、成果実現性の点で優れているとしています。


〔CSVとJ‐CSV〕


 著者は、ポーターのCSVに共感しつつも、日本の文化を生かしたJ‐CSV、がポーターのCSVより優れた実効性を発揮できるとして、提案をしています。


 ポーターのCSVはポジショニング(What)が主で、そこには、「志(Why))」と「人間性(How)」の二つが欠けているとして、特に「志(Why))」をCSVのスタートにすべきとし、著者はJ‐CSVを提唱します。


〔J-CSVによって日本企業は飛躍できる〕


 著者は、かつてアメリカ発のTQC(Total Quality Control )が日本の現場の力と相俟って「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を築いたように、現場力を生かしたJ-CSVに日本企業の飛躍のチャンスがあるとして、J-CSV経営実現のための「J-CSV経営実現の7要件」と「J-CSV経営実現の4つの課題」を提唱しています。ポーターの理論は「7要件」「4課題」にまで具体化した理論になっていないのです。それを次の項で見てみましょう。



■      日本的経営の強さを改めて認識しよう。J-CSV経営で日本企業は飛躍できる。


【J-CSV経営実現の7要件】


 7要件として、次の7つをあげています。①社会課題をどうとらえるか?②大義はあるか?③「(我社)ならでは」のひねりがあるか?④儲けの仕組みにどう変換するか?⑤誰をどう巻き込むか?⑥いかにスケールするか?⑦いかに持続的成長を実現するか?の7つです。


 この7つは、次の「4つの課題(経営モデル)」を作る前提として、不可欠の要素として上げています。著者が、日本人の感性をもって、いろいろな形で係ってきたCSV企業の成功要因を抽出したものとも言えます。著者が係った企業のケース・スタデイと合わせ、詳細は紹介本をお読みください。


【J-CSV経営実現の4つの課題】


 4つの課題として次の4つをあげています。著者の強調したい点は、ベストプラクティスではなく、独自の、フロンティアの「型」を作るべしと強調します。


 ①ガバナンスモデル(掲げる社会価値と経済価値が経営管理のコアとしての機能を果たせるかを見極める)②ビジネスモデル(持続可能なCSV行っていくための、規模の経済(Scale)、範囲の経済(Scope)、技能の経済(Skill)の「3Sの経済」を獲得できるビジネスモデルを創出する必要がある)③組織モデル(CSVを全社・全員に埋め込み、駆動させうる組織にする)の3つのモデルをまず創り上げ、それらを統合し、 4つ目の課題「J-CSVモデル」を創るべしとします。「J-CSVモデル」は、現場力を生かし、日本人的資質の長所を生かし短所を克服した、「共通価値」ではなく「共創価値」であり、グローバルに発信できるモデルになると著者は強調します。詳細は紹介本をお読みください。


【J-CSVが日本企業を救うグローバル・モデルになるのは何故か】


 著者は日本的経営の強みを四つあげています。その四つの強みは、CSV経営と相性が良いといいます。


 『一つは、日本的経営の根っこにあるのは、武士道と商人道の二つの「道」だ。そして武士道は社会的価値、商人道は経済的価値に当たる。「道」の本質は「極める」ことだ。つまり日本企業には「CSV道」を極めていく素地がある。


 二つ目は、日本企業らしい奥行きの深さ(悪く言うと曖昧さ)である。CSVは社会的価値と経済的価値をトレード・オフの関係でなくトレード・オンの関係でとらえていく必要のあるもの。それを可能にするのは、日本企業の二枚腰的忍耐強さや、持続力、「つなぎ」「ずらし」といった曖昧さ故に生き続ける技術である。


 三つ目は、明治の時代からある和魂洋才。つまり、外から取り入れた知識や技術を日本的文化や価値観をもって解釈し直して磨き上げる。この咀嚼力がアメリカ生まれのCSVを凌駕するJ-CSVを誕生させる。


 四つ目は、知恵を生み出す現場の力。研ぎ澄まされた現場の学習センサーは思いもつかないイノベーションを生み出す。日本的経営の一番の強みである。』と。


 著者は、以上の論拠から、J-CSVが必ず日本を救う経営ツールとなることを確信するのです。



■      ☆☆でいちばん大切にしたい会社」になろう(むすび)


 J-CSVという概念は、日本企業の経営戦略論としては未だほとんど浸透していないのではないでしょうか。著者の言うように、「J-CSV」が、日本企業、特に中小企業の救世主になると思います。是非「J-CSV」理論を吸収し自前のものとし、「☆☆でいちばん大切にしたい会社」になろうではありませんか。


 「☆☆」には、「世界」でも「日本」でも「地域」でも「ミニ・コミュニティー」でも、何が入ってもいいです。素晴らしいですね。やりましょう。 


 


【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。


 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


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 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。



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2016年03月22日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】世界情勢のメタを知ろう

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】世界情勢のメタを知ろう



 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。



■      今日のおすすめ


 『地政学入門』(高橋 洋一著 あさ出版)



■      現代の世界情勢は「ハイブリッド時代」(はじめに)


 今回は、PEST(P:政治、E:経済、S:社会、T:技術)に関する本のご紹介です。それも、国際政治情勢を読み解く上での基礎的情報が書かれている本です。『それぞれの国が、どのような地理的・民族的条件のもと、どのような歴史(特に戦争の歴史)積み重ねてきたかを以って、それぞれの国が持つ「国家の思惑(野心)」を理解できる』と著者は言っています。さらに『政治学理論である「民主主義国家同士は戦争をしない」という「民主的平和論」』を著者は紹介しています。『「民主的平和論」は「自由主義的・資本主義的平和」とも言われており、「領土を奪い合うのではなく、お互いに持っているものを対等に交換する(自由貿易)」ことで平和が維持される』と著者は言います。


 この紹介本で面白いのは、「世界の『民主度』を示す地図」(WEBでも「民主主義指数」で同様の地図が検索可)です。G0(ジー・ゼロ)といわれる時代ですがG20の中に3つの「独裁政治体制国家(中国、ロシア、サウジアラビア)」が含まれているのも、まさに世界が国家資本主義社会と自由主義社会が共存するハイブリッド社会と言えます。地政学的に言い換えれば、混成・混迷的世界情勢といえるのかもしれません。


 紹介本は、世界の主要国・地域について解説しています。主要な論点をご紹介しましょう。



■      世界の主要国・地域の「国家の思惑」と「論点」


【アメリカは「世界の警察官」ではない】


 2013年アメリカのオバマ大統領は、「アメリカは世界の警察官ではない」と明言しました。『一見、アメリカは好戦的な国に見えるが、他国の領土に対する関心は高くない。アメリカは、建国の精神である「自由の理念」が発展し、「自由を広める宿命を負っている」と拡大解釈し、特に9.11以降はテロ・大量破壊兵器の根絶を掲げ、アフガニスタン紛争、イラク戦争に突入して行った。しかし、世界の警察官ではないと明言した事で、アメリカの関心は、太平洋と大西洋をきちっと押さえておくことになった』と著者は言います。これによる、世界情勢への影響・変化は大きなものが有ると思います。


【中国の野心は「広い海」】


 『「中華思想」を強く持ち、憲法にも「中国共産党の指導」を掲げる中国は、共産党トップの国家主席の一存で決まる独裁主義国家といっていい』『中国の思惑は「広い海」がメイン、つまり第一列島線(東シナ海・南シナ海全域)、第二列島線(フィリピン、グアム、サイパン、沖縄、日本の近畿地方沿岸を含む)を防衛ラインと意識した動きを続けるであろう』と著者が指摘します。


【昔も今も不凍港と肥沃な土地を求め「南」に野心を向けるロシア】


 『1989年ベルリンの壁が壊され、1991年にソ連が崩壊する。ソ連を構成していた15カ国は分裂・独立して行った。ロシアの西側(除く中央アジア)でEU・NATOに加盟しない独立国は、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバのみとなった。ウクライナはロシアへの西欧諸国の影響の最後の砦である。クリミヤ併合はいかなる非難を浴びようと確保しなければならない地政学的意味を持っていた。最近のシリアへの支援は、アフガニスタンでアメリカにくじかれた「中東」への野心の表れである』と著者は指摘します。


【大戦に懲り「共同体」を結成したヨーロッパ】


 『第二次世界大戦に懲り、EC(欧州諸共同体)等を経て1993年に設立された「欧州連合」の基本は、人、サービス、交易、資本の移動を自由にする「シェンゲン協定(EU加盟国ではイギリスは除外適用、クロアチア、ルーマニア、ブルガリアは将来加盟義務・現在未加盟。EU非加盟国ではスイス、ノルウエーが締結・加盟。)」が基本にある。しかし、中東の難民・移民問題から「協定」の根底を揺るがされている。ヨーロッパの火薬庫は、かつての「バルカン半島」から、今や、「中東」に移っている。「中東」が火薬庫になった遠因をたどれば、1916年にオスマン帝国の分割をめぐり、アラブ世界を民族・宗派に関係なく、イギリス、フランス、ロシア(1917年の革命で離脱)の間で勝手に結んだサイコス=ピコ協定にある。また、「イスラム国」の成立は、アメリカの2003年3月のイラク戦争の結果、フセイン政権の残党が作ったとされている。』『根深い憎しみの連鎖は、まだまだ終わりそうにない。』と著者は指摘します。



■      これからの世界情勢を読む(むすび)


 これからの世界情勢は、ここまで見て来ましたように、様々な要因が複雑に絡み合い、先を読むのがなかなか難しいと思います。かといって、無視できる事でもありません。


 今こそ、目の前に出てくる事象のメタ(事象の背景にある重要な事実)を見極め適切な判断していく事が、私たち企業関係者に求められているのではないでしょうか。


 グローバル化が益々進む時代であればこそ、今日ご紹介した「地政学」にも関心を向けたいですね。 



【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。


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【バックナンバー】 経営コンサルタントの本棚


 


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2016年02月23日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「もしイノ」から学ぶ

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「もしイノ」から学ぶ


 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。



■      今日のおすすめ


「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」


            (著者:岩崎 夏海 ダイヤモンド社)


「イノベーションと企業家精神―Innovation and Entrepreneurship―」


            (著者:P.F.ドラッカー 訳者:上田 惇生 ダイヤモンド社)



■      「もしイノ」は面白い経営書です(はじめに)


 2009年12月に「もしドラ」が出版され、ドラッカー・ブーム、マネジメント・ブームが起きたことは皆様の記憶にも残っているのではないでしょうか。あれから6年後の2015年12月に「もしドラ」の第二弾と銘うって「もしイノ」が出版されました。「もしドラ」はドラッカーの「マネジメント」を教科書にして、既存の野球部にマネジメントを取り入れ、強化し、見事甲子園に出場するという青春物語でした。


 「もしイノ」の教科書は、ドラッカーの「イノベーションと企業家精神」です。「マネジメント」に比べ、やや難解な経営書です。やや難解な経営書が「もしイノ」にどのような物語として具象化されているのか興味があって「もしイノ」を読みました。


 物語は、かつて甲子園に出場した実績を持ちながら廃部になっていた野球部を、主人公の夢を中心とする六人のマネージャーと教師として赴任している「もしドラ」著者の文乃を部長としたメンバーのみで、ゼロから再スタートさせます。「イノベーションと企業家精神」の教えをもとに、新入学する野球部員の募集、監督の選任、野球部員の育成などを行い、その中で、イノベーションを実践し、スタートして3年目に甲子園に出場を果たすというストーリーです。


「もしイノ」を読むことで、やや難解な「イノベーションと企業家精神」を身近に感じることができます。読み始めると吸い込まれるように、あっという間に読み終えるでしょう。物語の中味は読んでからのお楽しみに。


「もしイノ」を企業の社員の皆さんで読み、「インフォーマルなミーティング」を開いてみたら、身近なイノベーションの機会に気づく良いチャンスになるかも知れませんね。



■      この機会にドラッカーの「イノベーションと企業家精神」も読んでみましょう


 「もしイノ」につられ、30年前に読んだドラッカーの「イノベーションと企業家精神」に再挑戦しました。「イノベーション」とは何か、「企業家精神」とは何かを改めて考えました。ドラッカーの紹介本で警告していることは、初版から30年経った今でも大切な警告として生きていると思います。


 本論に入る前に、英文の原著名が「Innovation and Entrepreneurship」となっていることに注目してください。翻訳の「企業家」は「企業家」+「起業家」の両意があると理解しますと、より深く読み取れると思います。


 ドラッカーがこの書で一番言いたいこと、それは『企業のサステナビリティー(持続性)は、イノベーションの機会・源泉を見つけ、それを企業家精神(体系的経営管理によるマネジメント)により事業として実現することにより、避けられない既存事業の衰退・陳腐化を乗り越え、新たな企業に発展・脱皮していくことに依る。しかもそれは多角化ではなく、今の事業を発展、成功させることに依らねばならない。』ではないでしょうか。更に、『「イノベーション」を、事業化(黒字化)するまで25年もかかったコンピューター産業などのハイテクのみ、と思ってはならない。「外へ出て、よく見て、問い、よく聞くことにより得られるイノベーションの機会を取り上げ分析し、明確な目的意識のもとに、合理的かつ体系的に行われる組織的活動」をイノベーションと捉えるべきで、ローテク、ノーテクも大切なイノベーションである。』と言っています。紹介本の中のドラッカーの主張を、三つのポイントに絞り、ご紹介したいと思います。詳細は紹介本をお読みください。


【イノベーションの実践―イノベーションの機会―七つの源泉】


 イノベーションこそ企業家に特有の道具です。企業家はイノベーションにより資源に新たな能力を付与し、真の資源たらしめることができるからです。イノベーションは一般的に平凡です。なぜなら、変化を利用しているに過ぎないからです。イノベーションの機会を与える、典型的な変化についての体系的検討のノウハウが、七つの源泉です。七つの源泉の順番は、信頼性と確実性の大きな順番に並べられています。加えて最初の四つは、組織の内部、所属する産業の内部の事象(身近に存在する事象)です。残りの三つは企業や産業の外部における事象(よく目立ち派手ながら結果の予測が難しい)です。


<イノベーションの機会―七つの源泉>                               ①予期せざる成功・失敗などの、予期せざるものの存在。②調和せざるものの存在、  すなわちギャップの存在。③必然的に必要なる物、すなわちプロセス上のニーズの存在。④産業や市場の構造変化。⑤人口構成の変化。⑥認識の変化、すなわちものの見方、感じ方、考え方の変化。⑦新しい知識の獲得。


【イノベーションにおける企業家的経営管理(企業家精神)】


 「七つの源泉」による機会の分析と体系的・勤勉な努力を土台とした、明確な目的意識を持つイノベーションのみが、成功すると強調します。加えてイノベーションを明確に区別された仕事とし、既存のものから切り離した組織としてマネジメントされるべきと主張します。また、区別された組織は企業家的経営管理によりマネジメントされるべきと主張します。


【イノベーションにおける企業家的戦略―手薄なところを攻撃せよ】


 イノベーションを実践するに当たり、企業家的戦略の立案が重要と強調します。その戦略の一つとして、最もリスクが小さく成功の公算が大きい戦略を示しています。「創造的模倣戦略(半導体の進化によりスイスでクォーツ・デジタル時計が世に出たが、スイスが既存時計に依存していたところに、日本のセイコーがクォーツ・デジタル時計を標準化し市場に投入し、世界のベストセラーとなった例。市場志向・市場追従戦略。)」と「企業家的柔道戦略(ゼロックスは開発したコピー機を大型ユーザーに絞っていたが、日本のメーカーは比較的小さな顧客のニーズに答えた製品を出し、その市場を押さえた例。)」です。つまり手薄なところを狙う戦略です。イノベーションの成功には必ず戦略が必要であることを示しています。



■      今がイノベーションの大切な時(むすび)


 イノベーションは労働人口の減少社会、経済のグローバル化の中でその必要性は増す一方です。大企業は勿論ですが、中小企業こそイノベーションが生き残りのために必要とされます。


 ドラッカーは、イノベーションを成功に導くのは、前述した「機会の分析に基づく明確な目的意識」「イノベーション組織の企業家的経営管理」「イノベーション組織の企業家的戦略」の三つが一体としてマネジメントされた場合と言っています。


 本書を参考にしながら、まず身近なイノベーションの機会を探すことからはじめてみませんか。



【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。


 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


  http://sakai-gm.jp/


 


【 注 】


 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。



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2016年02月22日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「もしイノ」から学ぶ

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】「もしイノ」から学ぶ


 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。



■      今日のおすすめ


「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」


            (著者:岩崎 夏海 ダイヤモンド社)


「イノベーションと企業家精神―Innovation and Entrepreneurship―」


            (著者:P.F.ドラッカー 訳者:上田 惇生 ダイヤモンド社)



■      「もしイノ」は面白い経営書です(はじめに)


 2009年12月に「もしドラ」が出版され、ドラッカー・ブーム、マネジメント・ブームが起きたことは皆様の記憶にも残っているのではないでしょうか。あれから6年後の2015年12月に「もしドラ」の第二弾と銘うって「もしイノ」が出版されました。「もしドラ」はドラッカーの「マネジメント」を教科書にして、既存の野球部にマネジメントを取り入れ、強化し、見事甲子園に出場するという青春物語でした。


 「もしイノ」の教科書は、ドラッカーの「イノベーションと企業家精神」です。「マネジメント」に比べ、やや難解な経営書です。やや難解な経営書が「もしイノ」にどのような物語として具象化されているのか興味があって「もしイノ」を読みました。


 物語は、かつて甲子園に出場した実績を持ちながら廃部になっていた野球部を、主人公の夢を中心とする六人のマネージャーと教師として赴任している「もしドラ」著者の文乃を部長としたメンバーのみで、ゼロから再スタートさせます。「イノベーションと企業家精神」の教えをもとに、新入学する野球部員の募集、監督の選任、野球部員の育成などを行い、その中で、イノベーションを実践し、スタートして3年目に甲子園に出場を果たすというストーリーです。


「もしイノ」を読むことで、やや難解な「イノベーションと企業家精神」を身近に感じることができます。読み始めると吸い込まれるように、あっという間に読み終えるでしょう。物語の中味は読んでからのお楽しみに。


「もしイノ」を企業の社員の皆さんで読み、「インフォーマルなミーティング」を開いてみたら、身近なイノベーションの機会に気づく良いチャンスになるかも知れませんね。



■      この機会にドラッカーの「イノベーションと企業家精神」も読んでみましょう


 「もしイノ」につられ、30年前に読んだドラッカーの「イノベーションと企業家精神」に再挑戦しました。「イノベーション」とは何か、「企業家精神」とは何かを改めて考えました。ドラッカーの紹介本で警告していることは、初版から30年経った今でも大切な警告として生きていると思います。


 本論に入る前に、英文の原著名が「Innovation and Entrepreneurship」となっていることに注目してください。翻訳の「企業家」は「企業家」+「起業家」の両意があると理解しますと、より深く読み取れると思います。


 ドラッカーがこの書で一番言いたいこと、それは『企業のサステナビリティー(持続性)は、イノベーションの機会・源泉を見つけ、それを企業家精神(体系的経営管理によるマネジメント)により事業として実現することにより、避けられない既存事業の衰退・陳腐化を乗り越え、新たな企業に発展・脱皮していくことに依る。しかもそれは多角化ではなく、今の事業を発展、成功させることに依らねばならない。』ではないでしょうか。更に、『「イノベーション」を、事業化(黒字化)するまで25年もかかったコンピューター産業などのハイテクのみ、と思ってはならない。「外へ出て、よく見て、問い、よく聞くことにより得られるイノベーションの機会を取り上げ分析し、明確な目的意識のもとに、合理的かつ体系的に行われる組織的活動」をイノベーションと捉えるべきで、ローテク、ノーテクも大切なイノベーションである。』と言っています。紹介本の中のドラッカーの主張を、三つのポイントに絞り、ご紹介したいと思います。詳細は紹介本をお読みください。


【イノベーションの実践―イノベーションの機会―七つの源泉】


 イノベーションこそ企業家に特有の道具です。企業家はイノベーションにより資源に新たな能力を付与し、真の資源たらしめることができるからです。イノベーションは一般的に平凡です。なぜなら、変化を利用しているに過ぎないからです。イノベーションの機会を与える、典型的な変化についての体系的検討のノウハウが、七つの源泉です。七つの源泉の順番は、信頼性と確実性の大きな順番に並べられています。加えて最初の四つは、組織の内部、所属する産業の内部の事象(身近に存在する事象)です。残りの三つは企業や産業の外部における事象(よく目立ち派手ながら結果の予測が難しい)です。


<イノベーションの機会―七つの源泉>                               ①予期せざる成功・失敗などの、予期せざるものの存在。②調和せざるものの存在、  すなわちギャップの存在。③必然的に必要なる物、すなわちプロセス上のニーズの存在。④産業や市場の構造変化。⑤人口構成の変化。⑥認識の変化、すなわちものの見方、感じ方、考え方の変化。⑦新しい知識の獲得。


【イノベーションにおける企業家的経営管理(企業家精神)】


 「七つの源泉」による機会の分析と体系的・勤勉な努力を土台とした、明確な目的意識を持つイノベーションのみが、成功すると強調します。加えてイノベーションを明確に区別された仕事とし、既存のものから切り離した組織としてマネジメントされるべきと主張します。また、区別された組織は企業家的経営管理によりマネジメントされるべきと主張します。


【イノベーションにおける企業家的戦略―手薄なところを攻撃せよ】


 イノベーションを実践するに当たり、企業家的戦略の立案が重要と強調します。その戦略の一つとして、最もリスクが小さく成功の公算が大きい戦略を示しています。「創造的模倣戦略(半導体の進化によりスイスでクォーツ・デジタル時計が世に出たが、スイスが既存時計に依存していたところに、日本のセイコーがクォーツ・デジタル時計を標準化し市場に投入し、世界のベストセラーとなった例。市場志向・市場追従戦略。)」と「企業家的柔道戦略(ゼロックスは開発したコピー機を大型ユーザーに絞っていたが、日本のメーカーは比較的小さな顧客のニーズに答えた製品を出し、その市場を押さえた例。)」です。つまり手薄なところを狙う戦略です。イノベーションの成功には必ず戦略が必要であることを示しています。



■      今がイノベーションの大切な時(むすび)


 イノベーションは労働人口の減少社会、経済のグローバル化の中でその必要性は増す一方です。大企業は勿論ですが、中小企業こそイノベーションが生き残りのために必要とされます。


 ドラッカーは、イノベーションを成功に導くのは、前述した「機会の分析に基づく明確な目的意識」「イノベーション組織の企業家的経営管理」「イノベーション組織の企業家的戦略」の三つが一体としてマネジメントされた場合と言っています。


 本書を参考にしながら、まず身近なイノベーションの機会を探すことからはじめてみませんか。



【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。


 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


  http://sakai-gm.jp/


 


【 注 】


 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。



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2016年01月26日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】2016「日本の論点」

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】2016「日本の論点」

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『2016日本の論点』(編著:日本経済新聞社 発行:日本経済新聞出版社)

■      2016年の初めにP・E・S・Tの論点を整理しておこう(はじめに)

 私は、年初にPESTに関る本を読む事にしています(P:政治、E:経済、S:社会、T:技術)。それは予測される論点を整理し、企業経営における変化への対応力を高める必要に答えるためです。

 紹介本「2016日本の論点」は、日経の論説委員陣が各専門分野の知見に基づき、2016年以降の国内外の注目すべき論点を抽出・分析し、方向・結論を示しており参考に出来ると思います。

 紹介本を読んでの感想は、2016年以降はいつになく、グローバルな論点に視線が向かうことです。その中で特に注目したい視点を次項で見てみたいと思います。

■      2016年の主要な注目情報はこれ

【やってきた第四次産業革命】

 ドイツ発の「インダストリー4.0(第四次産業革命)」に注目しましょう。「インダストリー4.0」は、機械化(18世紀)、自動化(20世紀始め)、情報化(1980年代)に続く、「スマート化」「ユビキタス・ネットワーク化」による第四次産業革命と言われています。トヨタに代表される日本の製造システム(JIT生産方式)、アメリカへ渡った「リーン生産方式」等に追い詰められたドイツが必死になって探し求めた経営システムです。「インダストリー4.0」とはいったいどんなものか。それは一言でいうと「スマート・ファクトリー&オープン・プラットフォーム」です。それはサプライチェーンとバリューチェーンが密接に結合し、高い生産効率を維持しながら、全てのプロセスが、最もタイミングのいい時期に「顧客の欲しい一品」を届けるべく、同期して動くプラットフォームです。トヨタの生産方式は部分最適ですが、「インダストリー4.0」は全体最適を求めるシステムといっても良いでしょう。

 2015年4月に開かれた「ハノーバー・メッセ」では、ドイツのメルケル首相がインドのモディ首相をはじめとするインド企業を招き、モディ首相のスピーチが行われました。ドイツはこのプラットフォームを世界に浸透させようと国を挙げて推進しています。

 日本でも、2015年7月に結成された、富士通、パナソニック等を中心にした「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ」が動き始めています。このプラットフォームは大企業だけの問題ではなく、中小企業もこのプラットフォームに乗らなければ落ちこぼれになります。第四次産業革命の動きから目を離せません。

【国際情勢と日本】

 2016年はいつになく、海外の情勢を頭において経営を考える年になりそうだと思います。日本の人口・労働力減少が避けられないとなれば、大企業も中小企業も海外関連売上(輸出・外国人消費等を含む)を伸ばすことに目を向けざるを得ないのではないでしょうか。そこで気になる海外情報をいくつか上げてみました。  

〔失速する中国経済。軟着陸はできるか〕

 2015年8月の中国発の世界株安をご記憶ですか。NYダウは一時リーマンショックの777ドルを上回る1,000ドルを超える下落を記録しました。これは中国経済の世界に与える影響が大きくなっていることの証左です。

 中国は2016年3月の全国人民代表大会に備え、2015年12月に「中央経済工作会議」を終えています。2016年は習指導部が初めて立案する5カ年計画の最初の年です。2017年3月の共産党大会で5年毎の党最高主導部人事があり、2018年の全人代では国家主席が選任されます(習氏がそれぞれの大会で総書記、国家主席に再任の見込み)。2016年は習指導部にとって大事な年なのです。

 中国経済は、①製造業の過剰設備②過剰住宅在庫③地方政府の過剰債務④国有企業を中心とする非効率経営、等の問題を抱えています。習指導部はこの問題の解決に全力を挙げるでしょう。最近習主席は、向こう5年間は「年平均6.5%以上の成長が最低ライン」と明言しています(日経朝刊2015.12・22)。

 明るいニュースもあります。中国の第三次産業のGDPに占める比率が2005年の41%から2015年1~9月は51%と第二次産業(47%⇒41%)を逆転し、しかも足下の成長率が第二次産業の6%に対し第三次産業は8%以上と高く、中国の産業構造の変換が図られつつあることです。求人倍率も足下は1以上と、今後の国有企業の合理化などの要因があり先行き不透明ながら、安定しています(日経朝刊2015.12・21)。

 直近のOECDのレポート(11月9日発表)によれば、中国の内需が2016-17年に亘り2%マイナスとなった場合のGDPの下押し影響を、世界全体で16年▲0.7%、17年▲0.9%、日本については16年▲0.8%、17年▲1.0%とレポートしています。無視できない影響であり、今後の中国の政治・経済・社会の動向を注視したいですね。同時に世界経済が、中国に代表される国家資本主義とアメリカ・日本等の自由主義が共存するハイブリッド経済の時代になった感を強く抱きます。

〔インドの10年が始まった〕

 2014年の世界人口白書によれば、インドは12.6億人と中国の13.7億人に次ぐ第2位にあります(ちなみに3位以下はアメリカ、インドネシア、ブラジル、パキスタン、ナイジェリア、バングラディシュ、ロシアと続き10位は日本の1.3億人です)。インドの政治・経済の状況を中国と比較してみますと、①政治は民主主義で安定成長が見込める②産児制限がないので人口が増え続ける③労働力人口比率が中国は2010年の74.3%をピークに2050年には58.9%まで低下し続けるが、インドは2010年の64.0%から2050年には67.1%と安定した推移を示す(国連発表)④足下の一人当たりGDPは1,800ドルと2005年の中国とほぼ同じであり、中国が2008年には一人当たり3,000ドルと消費ブームの起点となり、高い成長を遂げたことを考慮すると、インドも2018年頃に消費ブームの起点を迎え、高い成長が見込める、等が上げられます。

 これらの要因や国連のデータ等を併せ予測すると、インドの人口は2022年には14億人を超え中国を追い越し世界1位となり2050年には17億人に達すると見込まれています。労働力人口も安定的に増加が見込まれ高齢化に伴う経済成長へのブレーキも心配が要りません。これらを背景に、IMFは2016~20年のインドの成長率を7.5~8%と見ています。今インドの潜在成長力に目をつけ、外国企業が進出を始めています。これらも併せ、インドは、心配されている産業インフラ不足を克服し、安定した高成長が見込めるのではないでしょうか。インドに注目です。

■      2016年の企業経営はグローバルの視点が欠かせない(むすび)

 主要な注目情報を前項で見てきましたが、字数の関係で書ききれない海外の注目情報が多くあります。難民とテロ問題に揺れるEU、2017年1月に新大統領が就任する米国、原油安に揺れる中東産油国やロシア等の資源国、今後15年間で12億の人口が17億に増えるアフリカ、2015年12月に発足したASEAN経済共同体(AEC)を先取りする形で物流が広がっている東南アジア、等グローバルな論点が山積みです。

 2016年は、大企業も中小企業も、グローバル・リスクへの対応力の強化とグローバル・チャンスを如何に捉えていくかが、経営の良し悪しの分かれ目を決める一つの大きな要素となる年と思います。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴35年の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。

  


2015年12月22日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】異文化注入と企業改革

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】異文化注入と企業改革

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『日産驚異の会議―改革の10年が産み落としたノウハウ―』

(著者:漆原次郎 東洋経済新報社)

      外国人がトップになるということの意味(はじめに)

 1990年代日産自動車は、先行きに目処が立たない経営危機に陥っていました。そのような時、1999年3月に世間から驚きと興味を以って受け止められたニュースがありました。それはカルロス・ゴーンの日産自動車の最高責任者に就任するというニュースでした。それから10年以上を経た日産自動車は、グローバル販売台数420万台、連結営業利益率8%、実質有利子負債ゼロ実現、品質分野におけるリーダーとなる等の目標を掲げ、総じて目標どおりの結果をあげることができました。その後リーマンショックの影響を受け一時的に業績が下がりましたが、2015年度はグローバル販売台数550万台をはじめ、過去最高の業績(連結)を達成するとの決算予想です。

 これだけの結果を出せた背景に何があったのでしょう。大企業のみならず中小企業にとっても学ぶべき点があるはずと思い、本紹介本を採り上げました。

 結果を見事に出したカルロス・ゴーンは、成功のポイントをこのように語っています。「1999年当時の日産と、今の日産は異なります。現在の日産は、より柔軟で、クロスファンクショナルな会社です。今後も成功していくために求められる資質です」と。

 「柔軟」とは何か。本書からは、「適切な意思決定のできる(「意思決定の質」)、競合他社よりも迅速な意思決定ができる(「意思決定のスピード」)、以上の二つの意思決定を生み出す時間、手数、費用が適切である(「意思決定の労力」)という3つの意思決定の要素を実現する仕組みがあり、その仕組みが、固定化することなく発展・成長し続ける組織の細胞として機能している状態」と読み取れます。

 「クロスファンクショナル」とは何か。本書からは、「部分最適ではなく全体最適を常に求める仕組みになっていることである」と読み取れます。それは、「国内・海外、部門、グループ各社間、組織の上下など、グループの全てに亘り全体最適を浸透させ、仕組みとして機能させ続けていく強い覚悟」と読み取れます。

 また、カルロス・ゴーンは、更に次のように語っています。「もちろん、日産の場合も、日本の企業としての文化を持ち、日本で積み重ねてきた社史があり、管理職のほとんどは日本人です。それは現実です。しかし、これからのことを考えれば、そういったアイデンティティを保ったうえで、世界に扉を開き、常にグローバルな視点で最適な選択をしていける企業になっていかねばなりません」と。

 この発言も深い意味を持っています。それは、国籍や地域や文化、さらに性別や年齢や学歴や価値観といった様々な背景を持つ個々の人材が、意見を出し合いぶつかり合う中で創造的なアイデアを出していくことを目指しています。そのためにも仕組みが必要です。英語を共通言語にしただけでは、コミュニュケーションが深まりません。共通言語を超えたものをお互いに理解する必要があります。それは文化であったり、教養や価値観であったりします。

 これらのニーズに答えた仕組みの代表的なものが「日産の会議」でした。詳細なノウハウは本書を読んでいただきたいと思います。「日産の会議」の特徴的なことをいくつか次の項で書かせて頂きます。

      日産を変えた「日産の会議」とは

【クロスファンクショナルチームと「日産の会議」】

 クロスファンクショナルチームは「部門を横断したメンバーからなる9つのチーム」で成り立っています。9つは「事業の発展」「財務コスト」「研究開発」などです。このチームの特徴は「財務コスト」チームに、製造から一人、研究開発から一人といった具合に、部門横断的に組成されている事です。クロスファンクショナルチームはグループ全体のあらゆる問題を抽出し、これらの提案を実行に移し、日産リバイバル・プランとして機能させ結果に繋げて行ったのです。

 ここで大切な事は、「クロスファンクショナルチーム」が日産リバイバル・プランを実行に移した後に、実行後の荒削りの状態を整備し、取組まれていない問題点を見つけて解決をする役割を担ったのが「日産の会議」でした。「クロスファンクショナルチーム」と「日産の会議」は、車の両輪でした。

【「日産の会議」は「V-FAST」と「DECIDEチーム」の二つがある】

 「V-FAST」チームは、素早く解決策を出すべき問題・課題テーマについて、事前準備はしておきますが、その日に始まり、その日に結論を出します。「DECIDEチーム」は、大きな問題に対し1~3ケ月をかけて結論を出すチームです。日常業務を行いながら、その間に会議を入れていきますので、二つのチームとも、メンバーのスケジュール調整を事前にしっかりと決めておきます。

 その日に結論を出す為、また異なる文化や価値観を持ったメンバーの共通部分を創る為には、使うツール、議事次第、議事録の取り方(すべてデジカメで撮影し、議事録は作らない)などについての“標準化”が図られています。

【「日産の会議」のメンバー】

 メンバー構成は、解決する課題に応じた部門横断型のメンバーです。メンバーは、リーダー(課題達成責任者)、エキスパート又はファシリテーター(課題解決支援者)、パイロット(課題設定・解決方策立案責任者)、クルー(各部門の現場スタッフ)から構成されます。会議のポイントになるリーダー、エキスパート、ファシリテーター、パイロットについては実践を伴った真剣な研修がなされます。

【「日産の会議」には意思決定者は会議に出席しない】

 リーダー(意志決定者)は、「日産の会議」が始まった後30分後に来て、テーマについての質問をうけ、テーマの方向性を確実にして退席します。終了の1時間前再度登場し、40分で、決められた解決策・課題の採否を決定します。残りの20分はリーダーが退席し、残ったメンバーで会議の評価をし、次の会議に向けた改善提案をして解散です。メンバーの自由で創造的な意見が出やすいようさまざまな工夫がなされています。

      「日産の会議」から中小企業が学ぶもの(むすび)

「クロスファンクショナルチーム」・「日産の会議」から学ぶべきものが少なくとも二つあると思います。

 一つは、企業文化の検証、見直し、改革ではないでしょうか。「クロスファンクショナルチーム」・「日産の会議」は部門縦割り文化・部分最適文化を部門横断文化・全体最適文化に、年功序列文化を適所適材文化に変えました。この様に過去の悪いしがらみと決別し創造的・革命的変革が生み出す結果をイメージ(仮説・検証)し、実行に移すことが大切ではないでしょうか。

 二つ目は、あらゆる現場の自由で創造的な意見が公の会議の場で採り上げられる、意思決定の仕組みではないでしょうか。「クロスファンクショナルチーム」と両輪をなす「日産の会議」の果たした役割に注目したいと思います。荒削りな戦略を、実行性のある現場の戦術・実戦計画に練り直し、良い結果に繋げたことに大きな意味があると思います。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴35年の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。

 

  


2015年11月24日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】外国人から見た日本(3)

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】外国人から見た日本(3)


 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。


■ 今日のおすすめ


 『文明の衝突』(著者:サミュエル・ハチントン 鈴木主税 訳 集英社)


 


■ 『文明』の視点から世界を俯瞰する(はじめに)


  「外国人から見た日本」シリーズの第三回として『文明の衝突』をご紹介します。
 本題に入る前に、『文明』の定義を明確にしておきましょう。著者は、「唯一ドイツにおいては、『文明』は、機械、技術、物質的要素にかかわるものであり、『文化』は価値観や理想、高度に知的、芸術的、道徳的な社会の質にかかわるものとして、文明と文化を区分した考えが根付いた」と説明します。更に続けて「しかし、ドイツ以外では、文明と文化は、いずれも人々の生活様式全般をいい、『文明』は『文化』を拡大したものである。『文明』とは『ある文化の領域』であり、『文化的な特徴と現象の集合』である」と説明します。ここでは『文明』を普遍的な定義で捉えます。
 著者は、現在世界には9つの文明があるといいます。西欧文明(含むアメリカ)、ラテンアメリカ文明、アフリカ文明、イスラム文明、中国文明(中華・儒教文化)、ヒンドゥー文明(インド)、東方正教会文明(ロシア、カザフスタン、ウクライナなど)、仏教文明(ミヤンマー、タイ、ラオス、カンボジア、モンゴルなど)、日本文明の9つです。日本を「近隣諸国と文化的な繋がりをほとんど持たない孤立した文明国」と他の文明から孤立した文明としてあえて一つの文明として区分しています。「『孤立文明国』日本」については、項を改めて見てみたいと思います。
 本書は、1996年に原著が発行され、1998年に日本語に翻訳された第一版が発刊され、今日現在第21刷を数える、名著といえる本です。なぜ名著なのかと言いますと、19年前に書かれた著書にもかかわらず、時代の古さを全く感じさせないのです。本書を読むと(ボリュームには泣かされますが)、今世界で起こっている事の背景が手に取るように判るのです。
 本書を、P・E・S・T(政治、経済、社会・技術)の視点から見ると、世界の政治(紛争・戦争)・経済を『文明』と言うメタ(meta=背後にある、判断の根拠に出来る事実情報)を通してみると、「目からうろこ」のように謎が解けてきます。特に1989年の冷戦終結後、イデオロギーによる対立軸が無くなり、世界中で今日に至るまで発生した、あるいは発生している、多くの紛争・戦争は『文明』というメタの視点で見ると良く判ります。「グローバル」の視点が、国内でも海外でも必要とされる今こそ、問題・課題の判断材料の一つとして『文明』を加える事が大切ではないでしょうか。


 


■ 日本文明は日本一国で成立する「孤立文明」


【最も重要な「孤立文明国」日本】
 著者は日本について次のように記述します。「最も重要な孤立文明国は、日本である。日本の独特な文化を共有する国はなく、他国に移民した日本人はその国で重要な意味を持つほどの人口に達することもなく、移民先の国の文化にも同化してしまう(たとえば日系アメリカ人がそうだ)。日本の孤立の度が更に高まるのは、日本文化は高度に排他的で、広く支持される可能性のある宗教(キリスト教やイスラム教)やイデオロギー(自由主義や共産主義)を伴わないという事実からであり、そのような宗教やイデオロギーを持たないために、他の社会にそれを伝えてその社会の人々と文化的な関係を築くことができないのである。」更に著者は言います。「それゆえ、日本主導の地域的経済グループを作る事ができない」と。
 著者の指摘の納得性はともかく、この指摘に耳を傾け、我々が「どのように見られているのか」「われわれは何者か」「われわれは何をしたら良いのか」についての基本認識の一つとしたいと思います。
 指摘の一つに「日本文化は高度に排他的」とあります。参考までにアメリカの人口について考察してみましょう。アメリカは全体では人口増加を続けています。2010年で3億1千万弱の人口を抱えます。しかし白人比率は63.7%まで落ち、下がり続けています。白人人口の絶対数はほぼ横這いです。それをカバーして比率が上がり、人口増加を支えているのは、ヒスパニック・ラテン系とアジア系を中心とした非白人です。国・文明の発展・維持の重要な要因は人口です。この点一つをとってみても、著者の指摘は示唆に富んだものと認めざるを得ないのです。


 


■ 『文明』の視点から見た日本の未来(むすび)


 本書の題名が「文明の衝突」とありますが、著者は最後に次のように結んでいます。「人類が向っているのは、さまざまな文明が平和的に相互交流し、協力して生きていくことを学ばねばならない時代である。互いに学びあい、相手の歴史や理想や芸術や文化を研究し、互いに各自の生活を豊にしていくのだ。それ以外の道を選べば、この過密で小さな世界では、誤解と緊張、衝突、破局を招くばかりである。平和と文明の将来は、世界の主要文明の政治的、精神的、知的指導者達の理解と協力いかんにかかっている」と。
 この著者の結びの進言・警告は、企業経営の観点からも、大切な事ではないでしょうか。大企業であろうが中小企業であろうが、海外進出企業であろうが国内企業であろうが、グローバルというトレンドを避けて進めないのが現実ではないでしょうか。
 各企業が抱える課題・問題の解決に、この著者の進言・警告がお役に立てたら幸いです。



【酒井 闊プロフィール】
 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm
  http://sakai-gm.jp/


【 注 】
 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。


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2015年10月20日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】外国人から見た日本(2)

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】外国人から見た日本(2)

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『菊と刀―日本文化の型―』
     (著者:ルース・ベネディクト 長谷川松治 訳 講談社学術文庫

■ 「菊と刀」は今も多くの日本人に読まれている(はじめに)

 「私たち日本人は何者か」「私たち日本人はどの様な強みと弱みを持っているのか」このような問いを自問したとき、すらすらと客観的な正解を得られるのでしょうか。「『ジョハリの窓』の法則」に「Open Window(開かれた窓=自他共に知っている)」と「Blind Window(気づかない窓=他者は知っているが自分は知らない)」の象限がありますように、その答えは自分自身でわかる部分と自分以外の他者から見なければ解らない部分に分けられるように、日本人自身でわかることと、日本人以外から見なければ解らないことに分けられるのではないでしょうか。

 「外国人から見た日本」シリーズの第二回として「菊と刀」をご紹介します。

 本書は著者ルース・ベネディクトが、戦前(1944年9月)アメリカ・戦時情報局の依頼により、日本を征服し、占領統治をする戦争目的のための報告書として書かれたものです。
 しかし、その内容は、本書の巻末で、故人となられた著名な法社会学者の川島武宜先生が「評価と批判」で、「自国に有利なことを書くことなく、事実を歪曲することなく、地味な科学的な敵国分析」、「今までの日本人論のどれにもない新しい感覚と深い鋭い分析とを持っている」と述べているように、文化人類学者としての著者ルース・ベネディクトが書いた学術書としての日本人論です。

 本書は、1946年に原著が発刊され、1948年に日本語訳本が発刊されました。以来今日に至るまで、日本語訳の本書は、現在も版刷を重ね、初版から数えると版刷は150を超え、出版界での特異な出版物となっています。隠れた名著と言えるのではないでしょうか。

 本書を、P・E・S・T(政治、経済、社会・技術)の視点から見ると、私達の行動の背景には、ほぼ無意識に、文化・民族精神(日本文化の型)が働いていると捉えるべきではないでしょうか。その上で、文化・民族精神(日本文化の型)が「強み」として働いているのか「弱み」として働いているのかを認識し、「弱み」として働いているのであれば、「弱み」を排除することに本書の意味があるのではないでしょうか。

■ 人類学者ルース・ベネディクトの的を射た分析

【「菊と刀」の書名の所以】

 著者のルースは「菊と刀」の書名の所以をこのように書いています。『「不遜であるとともに礼儀正しく」「頑固であるとともに順応性に富み」「保守的であるとともに新しいものを喜んで迎え入れる」「自分の行動を他人がどう思うだろうか、と言うことを恐ろしく気にかけると同時に、他人に自分の不行跡が知られない時には罪の誘惑に負かされる」など、見て見ぬふりを出来ない矛盾を日本人が持っていることに驚いた』と著者ルースは記しています。一人の人間である日本人が、相矛盾する行動をする事を、「菊と刀」と言う対立する言葉で表し、日本人論を書くに当たっての書名にしたと読むことができます。

 著者ルースは、日本の文化を研究するに当たり、日本の歴史(日本の律令時代から第二次世界大戦直後に)ついてかなり突っ込んだ研究をしています。

 その歴史的背景の中で築き上げられてきた日本文化の類型の特徴的なものの中で、経営に関係すると思われるのは、「各人が自分にふさわしい位置を占める文化」と、「西欧文化である『罪の文化』に対する日本の『恥の文化』」です。

【各人が自分にふさわしい位置を占める文化】

 著者ルースは、この文化を別の表現で、「『階層制度』を認め、その階層の中(はみださない事)での日常生活の『保証』と『安全』が確保される文化」だと言います。

 著者ルースは、日本の有史の中で、律令時代、武家時代・江戸時代、明治時代から戦前(近代)、戦後(現代)と時代は変わっても、ヨーロッパのように階層が入れ替わる革命はなく、各時代において階層制度が大枠で維持されて来たと言います。(詳細は本書の深い分析をお読みください。)敗戦後占領下で制定された「日本国憲法」も、序文の前の箇所に、「朕は、・・・帝国憲法第73条の規定による議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、公布せしめる」と記述され、背景にある事実の激変は兎も角、形の上ではスムースに新しい時代への移行がなされています。

 著者ルースは、階層制度の基本は家族にあると言います。世代、年齢、性別などの因子により、それぞれの「ふさわしい位置」を定める暗黙の詳細な規則が規定され、その詳細な規則を子供の時代から躾けられ、一人一人は、「ふさわしい位置」を守り全うする「期待どおりの人間」になることで、「ふさわしい位置」を『保証』され『安全』を得られると言います。

 著者ルースは更に、家族にベースを置く『階層制度』は、因子を変えながら、地域社会、政治・経済・職場社会、国家社会のあらゆる生活領域に応じて決められていると言います。相手によって違う「相応しい『おじぎ』の仕方」「相応しい『敬語』の使い方」に特徴的に現れていると言います。

 「ふさわしい位置」を大切にする文化が、その場の空気を乱さない文化、自分の主張をしない文化として、経営の「弱み」となっていないかを検証をする必要があるのではないでしょうか。

【「恥の文化」と「罪の文化」】

 著者ルースの分析の中で、特徴的といわれるのが、日本の「恥の文化」、西欧の「罪の文化」の区分です。

 ルースは、「恥の文化」について、「恥」とは他人の批評(嘲笑や拒否など)に対する反応を言い、他人の批評すなわち外部的強制力に重きを置く文化を「恥の文化」と定義します。一方「罪の文化」については「道徳の絶対的(普遍的)標準を説き、良心(内面的強制力)の啓発を頼みにする文化」と定義します。もちろん西欧にも恥の意識はあると言います。強弱の差においてそのように定義すると言います。

 「恥の文化」により生じやすいとよく言われるのが、集団主義、無責任体制、身内意識です。「赤信号、皆で渡れば怖くない」(欧米でこれをやり、厳しい目で見られた経験を持つ人が多い)といった集団主義の風潮は、少数意見を排除し、組織の活性化を削ぐ原因にもなりかねません。またよく言われる「日本人は議論下手」にも通じ、誰の意見か不明確になり、無責任体制にも繋がります。更には多数派に属している安心感が身内意識を作り上げることも有ります。これらが経営の「弱み」になっていないか検証する必要があると思います。

■ ルース・ベネディクトの分析から何を学ぶべきか(むすび)

 日本企業の経営の構造的要素に、日本文化の類型が、多い少いの差はあっても、影響していることを認めることは、経営にプラスになるのではないでしょうか。

 2008年度から継続して数字を比較できる上場企業110社の海外売上高比率は67.6%(2015年4-6月―9月8日日経朝刊―)に至っている現在、外国文化を理解する必要性、日本文化と外国文化のシナジーを図る必要性に迫られていると言えます。

 また、海外とは関係の少ない中小企業においても、日本文化の経営への影響を認識し、「強み」を生かすことは当然として、「弱み」を排除する仕組みの構築・改革に向けて経営の舵を切って行くことが大切ではないでしょうか。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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