2013年04月06日

■■【経営コンサルタントの独り言】 大型通商交渉と日本

■■【経営コンサルタントの独り言】 大型通商交渉と日本

 NHKのテレビ番組「時論公論」で百瀬好道解説委員が、TPPなど大型通商交渉に関して日本のあり方を解説していました。興味を覚えましたので、そのポイントをまとめてみました。

◇1 大型通商交渉の規模

 「スケールが大きく複雑な通商交渉を同時並行的に進めていく時代を迎えています。大通商交渉時代」という表現をしていましたがTPP、FTAなどが盛んに関係国間で交渉中でしたり、これから交渉が始まろうとしたりという昨今を上手に表現していると言えます。

 日本、中国、韓国の3カ国では、FTA(自由貿易協定)の第1回目の交渉が始まりました。日本は、アメリカが主導するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への交渉参加も表明しています。

 いま日本が取り組む予定の大型交渉の対象地域における経済規模と世界全体のGDPに占める割合から見てみますと、その交渉の大きさを理解しやすいでしょう。

TPP 約40%
EU 約34%
ASEAN 約30%
日中韓 約20%

 上記は日中韓の20%は、ASEAN+6と重複します。また各数値に日本のGDPが重複しているので、これだけで100%を超えてしまいます。その点はこの数字を読む時に誤解のないようにお願いします。


◇2 大型通商交渉を理解する3つのポイント

 いずれも世界有数の経済大国や地域が相手の多国間交渉である点が、これまでにない大きな特徴です。日本にとって一連の交渉が持つ意味を、百瀬委員は3点指摘しています。

 第1に、韓国との競争上の不利を解消すること

 TPPと日EU交渉が、韓国との不平等とも言える通商関係を少しでも解消しようという取り組みです。たとえばアメリカ向けの自動車は、数年来に米韓では関税がゼロになります。

 二つ目は、世界をリードする新しい貿易ルール作りに加わること

 人やモノ、お金や情報が世界を駆け巡るようになり、ルール作りの重点は、従来の関税引き下げから投資の規則や知的財産権の保護といった領域に移りつつあります。

 三つ目は、アジア太平洋地域の成長と自由化を拡大すること

 TPPやASEAN+6、日中韓のFTAは、世界の成長センターと言えます。この地域で、自由化によってお互いの連携を強め、成長を加速させる枠組み作りの意味を持っています。


◇3 TPP参加反対派の主張

 貿易自由化交渉の推進は、安倍政権が6月にまとめる成長戦略の柱のひとつです。

 いずれの交渉の中でもとりわけTPPは重い経済的意味を持っています。

 TPPは、日米関係そのものにも関係しますし、ほかの交渉に与える影響の大きさからも、TPPは日本国民の関心を高めています。

 では、なぜ自民党内ですらTPP参加の賛否が分かれるのでしょうか。

 関税撤廃が原則で、あらかじめ例外品目を想定しているほかの協定と比べて、自由化の水準が高いからです。

 輸出産業や大企業にはメリットが期待できますので、賛成します。

 一方、これまで国内産業保護や規制で守られてきた農業や一部の産業では、安い輸入品の流入やアメリカ流の規制緩和を押しつけられることが懸念されるので反対しています。

 日米首脳会談で「聖域なき完全撤廃が前提ではない」ということが確認されたとはいえ、米をはじめとします日本の主な農産物における関税撤廃が例外として認められるかどうかは、非常に疑問な部分です。

 しかも、交渉開始からすでに3年も経っているTPP交渉ですが、今から日本が参加してルール作りに間に合うのかということも懸念材料です。


◇4 ルール作成に間に合うのか

 百瀬委員は、次の2項に注目して解説していました。

1.後発参加でルール作りに間に合うのか
2.聖域なき完全撤廃が前提ではないというのは本当に大丈夫か

 まず、ルール作りに間に合うかどうかの懸念から見てみましょう。

 TPP参加国は、2013年年内の決着を目標に、10月までに大筋合意を掲げています。日本の交渉参加時期は、アメリカ政府と事前協議や議会に通告する手続きもあって、今の時点では9月になってしまいます。すなわち極めて短期間の交渉にしか参加できないのです。

 しかし交渉関係者によりますと、年内決着は難しいと言われています。スケジュールが遅れれば、日本の意向を取り入れられやすくなります。

 関税の削減問題のほか、日本が関心を持つ知的財産権の保護といった重要分野の交渉がこれからのテーマですので、遅い参加とはいえ、まだ交渉できる余地はあります。

 スケジュールがらみで、7月に臨時の交渉を行うことも検討されています。日本の参加問題については、閣僚級協議の開催案があり、この場でゴーサインがでますと、7月から交渉に参加する可能性もでてきます。

 日本にとって、時間的に厳しいことには変わりがなく、どんなルールに重点を置くのか入念な交渉準備が必要です。


◇5 日本農業を守れるのか

 百瀬委員は、次の2項に注目して解説していて、前回はルール作りに間に合うのかについてご紹介しました。

1.後発参加でルール作りに間に合うのか
2.聖域なき完全撤廃が前提ではないというのは本当に大丈夫か

 上述2項目の農産物を関税撤廃の例外として勝ち取れるかという問題です。

 安倍総理大臣の日米会談で「聖域なき完全撤廃が前提ではない」という確認しました。それを受けて、自民党は米や麦など5品目の関税を堅持することを政府に求めています。

 これまでの交渉では、関税の撤廃について、原則は固まっています。しかし、具体的な品目や例外の扱いはほとんど議論されていません。

 アメリカが、オーストラリアなどから国内の農業を守るために一部品目の関税を維持したいという強い意向を持っています。

 このような現状を見ますと、日本が例外品目を確保できる可能性はあると考えます。しかし、すべての品目を守りぬけるかどうかということは言えません。

 百瀬氏は、上記のように解説していますが、直上の部分を自民党はぼかしながら国内世論を味方につけようとしています。

◇6 TPPのメリットと懸念

 前回、日本の農業を守れるのかという視点での百瀬委員の解説を説明しました。

 農業など個別分野の利害得失も確かに大切ですが、それだけに囚われて、TPPが持つ戦略的重要性を忘れてはならないという点では、百瀬委員に同感です。

 以下に、百瀬委員の解説を続けます。

 TPPは、将来的に中国が加入する事を想定した枠組みです。

 アメリカは、中国を異質な経済システムの国とみています。国営企業が大きな力を持っていたり、知的財産権に関して保護をキチンとすべきという意識が希薄であったりすることがその背景にあります。

 TPPに中国を巻き込むことは、経済圏が拡大するというメリットがありますが、アメリカは、中国を敵視して封じ込めるのではなく、中国をもっと開放的な国に導く手段と位置付けているのです。そうした意味でのルール作るためには、アメリカは日本を巻き込むことが重要と考えているのでしょう。

 それだけにかかわらず、TPPが他の通商交渉への影響力の大きさがあります。

 日本がTPPに前向きの姿勢を示した事で、日本との交渉に乗り気ではなかったEUや中国が態度を変えました。

 自由化の度合いが高いTPPに日本が参加することで、日本はそれを切り札にしてEU、中国、韓国との交渉に有利な材料として利用できるのです。

 百瀬委員の解説を読んでいて、TPPのルール作りでは、日米の協調というか相互理解が必要なことを改めて考えさせられました。

 一方で、日本政府の交渉力の弱さという不安材料があります。もし、アメリカが力で不合理な要求を押しつけて来るようなことがあれば、きっぱりと突っぱねるべきです。日本政府は、経済の原則とルールに則した交渉姿勢を貫けなければTPPへの参加は厳しいモノになるでしょう。 <完>

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