2014年02月05日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】新年の世界情勢を読む

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】新年の世界情勢を読む

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。


      
今日のおすすめ

 

 『知の武装』(著者:手嶋 龍一 佐藤 優 出版社:新潮社 )


      
新年のP・ESTは国際政治(はじめに)

 私は、毎年の初めに、その年のP(政治)E(経済)S(社会)T(技術)を読み取れる本を読むことにしています。2014年のP・E・S・Tに係る面白い本はないかと探している内に、出会ったのが今日ご紹介する本です。

 最近私が、マネジメントに重要と思っているキーワードがあります。それは「メタ(meta)」です。表面的に見えるもの或は一般的情報の裏にある真実、つまり背後にある、決断の根拠に出来る事実情報を「メタ」といいます。

 本書に出てくる、「インフォメーション(表面的情報)」に対し、その背後にある「インテリジェンス(トップが命運をかけて決断する拠り所となる情報)」を「メタ」の例として上げることが出来ます。「メタ」に注目し、国際政治を見てみましょう。


      
「メタ」に注目すると新しい視点が開ける

【二つのオリンピックのメタ】

 2020年の開催が決まった東京オリンピックの招致の成功は、「チームワークの勝利」とか、ロンドンから招いたプレゼン・トレーナーのマーティン・ニューマン氏のアドバイスが良かった、等と言われています。しかしこれ以外に私が全く知らなかったメタを本書で発見しました。

 それは、ロシアのプーチン大統領が、東京支援に傾いたからだと本書は言うのです。なぜ、プーチン大統領は東京支援に傾いたのか、その理由は、シリア問題と深く係っているのです。オバマ政権がシリア攻撃の決意を固めた早い段階で、日本の外交当局は、安部政権になってからの日米関係があまり良くないことに配慮し、「アメリカの軍事力行使を支持する」という方針を早々と打ち出しました。しかしその後、イギリスが離脱し、他の欧州諸国の支持も得られず、アメリカ自身も議会の承認が得られない事態となり、日本の「アメリカ支持」表明はフライングになってしまったのです。この様な状況の中で、2013年の956日のサンクトペテルブルグG20が開催されました。この会議で、安部総理は、シリア問題に関し「アメリカは非人道的行為を食い止める責任を果たしており、心より敬意を表する」と発言をしたのです。この発言をロシア側は、「安部総理は言を左右にして明確なアメリカ支持を与えなかった」と認識し、「アメリカ支持を表明すると思っていたプーチンは、安部総理を大変な胆力の持ち主と、感銘を受けた」と本書は言うのです。加えて同年97日からブエノスアイレスで開催される2020年のオリンピック開催地を決めるIOC総会に出席するため、G20は麻生副総理に任せ、96日にはブエノスアイレスに到着していました。この事態をプーチン大統領は、「これ以上長居するとアメリカから支持を迫られるから、安部は逃げるが勝ちと早めにG20を立ち去ったのだ」と日本に良いように解釈してくれた、と本書は言うのです。こうしてロシア関連票3票が東京に入り、三つ巴の開催地争いの中で、東京に決まる決定打となったと本書は述べています。

 一方、ソチオリンピックのメタはと言いますと、これもまたシリアと絡んでいるのです。それはテレビ等で報道されているように、アルカイダ系のイスラム原理主義者がソチオリンピックを妨害すると表明し、ロシア政府は威信にかけて安全なオリンピックにしようとしています。

 本書によれば、1817年~1864年の長期にわたり、当時のロシア帝国(ロシア革命は1917年)とチェチェン人とのコーカサス戦争があり、最終的にロシア帝国が勝利し平定したものの、チェチェン人の9割が殺戮されたといわれています。こうしたチェチェン人の末裔は、約250万人が中東・アラブに逃げ込んだと言われています。この中のかなりの部分が、シリアにいるといわれているのです。1920年代にソビエト連邦が成立すると、中東のチェチェン人と土着のチェチェン人との交流が禁止されましたが、1985年のゴルバチョフのペレストロイカが始まると、交流が再開します。しかし、中東のチェチェン人は北コーカサス地方に「大イスラム帝国」を建設すると呼号し、チェチェンとダゲスタン(カスピ海に面し、チェチェンの東隣に位置する共和国)に拠点を築きはじめたのです。一方土着のチェチェン人は、実質的な独立を、ソ連との、チェチェン独立戦争を通じた双方の「独立凍結」合意で勝ち取っており、それで十分であったのです。ここで、同じスンニ派でも、法学派が違う、中東系のチェチェン人(アルカイダ系)と、土着のチェチェン人との間で、激しい内戦が始まるのです。1999年ここに介入し「救いの手」を差し伸べたのが、当時のプーチン首相でした。プーチンはロシアに残るチェチェン人には、完全自治を認め、財政的支援もすると約束すると同時に、中東系チェチェン人を、片っ端から殺害し掃討し、現在のチェチェンはロシア連邦の一つとして、一応の安定を見ているのです。

 シリアには未だ中東系チェチェン人が多く残っており、シリアを拠点として、アルカイダ系のイスラム原理主義過激派がソチオリンピックを妨害することを、ロシアは恐れているのです。ソチオリンピックを安全のうちに終わらせるためにも、シリアのアサド政権を存続させる必要がロシアにはあったのです。

 このブログを皆さんが見られるのは、ソチオリンピック(2月7日~23日)の直後です。安全のうちに平和の祭典が終了していることを祈るばかりです。

【尖閣問題と今年3月に予定されている米中首脳会談のメタ】

 本書では、「日米同盟はつまるところ、二つの有事、つまり台湾の有事と朝鮮半島の有事に備えた安全保障上の盟約だ。現在の中国は、北朝鮮の安全保障を自国にとって死活的なものとは考えていない。したがって朝鮮半島を巡って米中両大国が軍事力で相まみえる可能性はもはやないといっていい。しかし台湾有事は違う。中国政府が密接不可分の一省だと主張している台湾が、独立に傾くようなことがあれば、中国の指導部は何のためらいもなく、人民解放軍に台湾海峡を渡るよう命令するだろう。  一方アメリカ政府は、台湾防衛のために第七艦隊を急派し、沖縄の海兵隊を投入する構えを見せるだろう。いま台湾海峡は、米中というスーパー・パワーが軍事的に衝突する危険をはらんだ地球上の唯一の地域なのだ。」と述べています。さらに「中国は台湾問題の延長線上で、尖閣諸島の領有権を声高に叫んでいる」と述べています。ここに、尖閣問題に中国がなぜ強硬姿勢を示すかの、メタがあると思うのです。

 一方、今年の3月米中首脳会談が開かれるとの報道のメタは何でしょう。本書によれば、「20136月パームスプリングで開かれた米中首脳会談で、習主席はオバマ大統領から、尖閣問題について、『領土問題についてどちらか一方の立場はとらない。双方が話し合いを通じて問題を解決して欲しい。』との見解を引き出した。このオバマ見解は、『日本が実効支配している尖閣諸島に中国が武力で手をつけるようなことがあれば、アメリカは日米安全保障条約第5条に基づいて武力発動の用意がある』とする、20109月の尖閣沖での中国漁船の日本の巡視船への体あたり事件の直後の、“クリントン発言”や2013年の年頭のアメリカ議会の“国防授権法の尖閣問題への見解”とは違い、日本の安全保障の観点から懸念のもたれる見解である。一方、尖閣諸島のような無人島を巡って、アメリカと干戈を交えることを避けたい中国にとっては、“クリントン発言”“アメリカ議会の国防授権法見解”の切り崩しに繋がる糸口である」としています。

 上記のようなメタがあり、3月の米中首脳会談が1年も経たないうちに再度開催されると考えるのは、穿った見方でしょうか。

【朱建栄事件のメタ】

 本書は、20141月に釈放が報道された、朱建栄事件に触れています。本書によれば、「20137月、日本の東洋学園大学教授の朱建栄氏が、中国に行ったきり、突然連絡が取れなくなった。そして、尖閣国有化一周年にあたる2013911日に、中国当局が身柄を拘束していることを認めた。この事件は、中国の軍、国家安全部等と、日本との関係を安定軌道に乗せたいとする、中国の宥和派(中国外交部)との権力闘争と見るべきで、宥和派を牽制しようという狙いが、事件の背後にある」と述べています。更には、「中国の公安当局に目をつけられる潜在的な危険があり、日本企業の従業員の渡航などに際しては留意をすべきである」と付け加えています。

 この事件のメタから、中国進出・中国渡航等のリスク管理の観点で、新たに読み取るべきことがあるのではないでしょうか。


      
正確なメタ情報に基づくマネジメントが求められている(むすび)

 ご紹介した本において、主に国際政治の視点から、意思決定をするトップの正確なメタ情報に基づく決断が重要であることが力説されています。

 上記にご紹介した以外にも、日頃の報道からは得られない、メタ情報が書かれています。2014年の国際情勢を読み取れる記事が多く書かれています。ご一読されると新たな視点が開かれるのではないでしょうか。

 一方、私たち経営コンサルタントが係る企業経営においても、勿論、表面的・一般的な情報も必要ですが、メタ情報(後ろにある、決断の根拠に出来る事実情報)を収集し、決断していくことが、作今の変化の激しい難しい時代にこそ、求められているのではないでしょうか。


【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。


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