2015年01月27日

■■【経営コンサルタントのお勧め本】日本の論点2015~16

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】  日本の論点2015~2016

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■    今日のおすすめ

  『日本の論点2015~2016』(著者:大前 研一 プレジデント社)

■ 2015年の初めに不確実性のマネジメントをしておこう(はじめに)

 私は、年初にPESTに関る本を必ず読む事にしています(P:政治、E:経済、S:社会、T:技術)。それは不確実性をマネジメントする準備の為です。不確実性をマネジメントするとは、企業戦略がまずあり、次に、戦略のシナリオを描く時に不確実性という問題に直面する事になります。この順序を踏まえた上で、将来シナリオを描くときに必要な情報つまり不確実性な事柄についての論点を整理し、その論点の解答をストックしておき、戦略のシナリオを描くときの一つの情報として活用する為です。

 紹介本「日本の論点」は、不確実な論点をすべて網羅しているわけではありませんが、いくつかの不確実な論点に対する、著者の知見に基づく一つの解答を与えており参考に出来るのではないかと思います。

■ 不確実性をPESTの切り口で解き明かす

【不確実性の日本と世界をPESTの観点で解き明かす】


 新しい年も、国内は勿論世界を見ても不確実性に溢れていると言っても過言ではないでしょう。不確実性の問題に正解はありません。先は見えないのですから。しかし、不確実性の問題に、いくつかの選択肢的答えを持っていなくては、前に述べた戦略シナリオを描く事は不可能です。
 そこで、紹介本「日本の論点」から、日本と世界のPESTに関するいくつかの不確実性の問題の解答を拾って見ました。


【日本の諸問題の手本はドイツにあった】


 日本の政治、経済の構造改革が叫ばれて久しいが、殆ど進展していない。その象徴的問題が、世界からいつ破綻するか注目されている「財政問題」である。著者は「変れない日本」の根本は、自民党と官僚ががっちり組んだ中央集権体制と利権構造を指摘する。2009年9月から2012年12月にかけて民主党が政権の座に就いたが、無残な結果をさらけ出してしまった。それは民主党が、自民党と官僚ががっちり組んだ利権構造を崩せなかった事にあると著者は付け加える。
 この象徴的「財政問題」を解決する手本がドイツにあると著者は紹介本で語っている。ドイツが手本になる点は二つあると著者は指摘する。
 一つは連邦制。ナチスドイツの中央集権制を、第二次世界大戦の戦勝国から、悪の根源として否定され、又ドイツ自らもしっかり反省しその事を認め、連邦制をスタートさせた。この連邦制が、ドイツ各州の責任感と各州間の競争を生み、ドイツの国力の向上を生み出していると指摘する。
 二つ目は、教育制度である。ドイツには小学4年生から、大学等へ進む「ギムナジウム」と、手に職をつける「職業教育課程」に分かれる。「ギムナジウム」に進むのは30%そこそこ。殆どの学生が目的や使命感を持たず、漠然と大学へ進みその結果57%という大学進学率(含む短大)を生み出している日本とは大違いである。   「職業教育課程」は“デュアルシステム”即ち“理論と実践”をしっかりと教え込むと同時に、「職業訓練機構(BIBB)」による資格制度や、社会に出てのマイスター制度に支えられ、手に職をつける「職業教育課程」を選択した人達に、誇りと活躍の場を与えている。この事が、ドイツの中小企業が世界で高く評価される要因となっていると指摘する。
 過去の成功体験から目覚めきれない、日本の政治家と国民。その結果の日本国の姿がここにある。このままでは、「日本沈没」に向うしかない。今こそ第一の開国(明治維新)、第二の開国(第二次世界大戦敗戦)の時の精神に立ち返り、日本を変える時に来ているのではないでしょうか。まさに第三の開国を実践に移す時ではないでしょうか。たとえ一時的に労働人口が減少しても、GDPを今以上に上げ、かたや財政再建を成し遂げるには、日本の政治、経済、社会の構造改革があるのみと著者は語ります。


【これからのエネルギー問題】


 エネルギー問題は、今後の日本、世界を読む上で、注視すべき問題です。国内のエネルギー問題は、著者が指摘するように、エネルギー政策の大枠がしっかりと決められる事で、安定した状況に向けて進んでいくと思います。
 注目すべきは、アメリカのシェールガス革命が、日本と世界の政治、経済に与える長期に亘っての影響であると著者は指摘します。先般(2014年11月27日)OPECの総会で原油の減産が見送られました。OPEC特にサウジアラビア等が目途するのは、アメリカのシェールガス潰しです。アメリカのシェールガスの現時点の投資採算は、1バレル70ドルと言われています。一方でシェールガスの関係者も、技術革新で採算ラインを低くする事に懸命であり、出来ると確信しています。この状況下で、アメリカのシェールガスが増産され、それに伴い原油価格が低下していくとどうなるのでしょう。因みに、OPEC総会直後から70ドル/1バレルを割り込み、2015年1月5日現在、52ドル/1バレル前後で推移しています。OPEC原油とシェール・オイルの攻めぎ合いの様相です。先行きが注目されます。
 著者は次のように指摘します。ロシアから天然ガスを輸入している欧州は、シェールガス革命の結果廉価になったアメリカの石炭への切り替えや、ロシアに対する値引きを要求する。これにより窮地に追い込まれたロシアは、天然ガスの新たな市場を、中国、韓国、日本などに求め、必死に売り込む事になる。又、アメリカの中東依存が低下する事により、国防費の80%を振り向けている中東政策に大きな変化が出てくると予想する。さらにはアメリカの貿易収支の改善により、ドル高(円安)が予想され、日本は、円安誘導から一転、円安防止に苦慮する事になる可能性も予想されます。
 この様に今後の世界の政治、経済のメタ(背後にある、決断の根拠に出来る事実情報)として、シェールガス革命を捉えていく必要があると思います。

■ 好感度世界ランキング下落を軽視してはならない(むすび)

 毎年、イギリスのBBCの調査による国別好感度ランキングが発表されます。毎年12月から4月に調査をし、5月に発表します。「世界に好影響を与える国(A)」「世界に悪影響を与える国(B)」はどの国か国際世論調査をし、(A)-(B)の点数(比率)の多い順に好感度が決まります。日本は、2012年は1位、2013年は4位、2014年は5位と順位を落としています。中国、韓国の日本に対する「悪影響を与えている国」の点数(比率)が高まった事が大きな原因でしょう。
 ちなみにドイツは、2012年は2位、2013年、2014年は1位でした。このドイツの順位の安定振りと日本の順位の下落振りを見て、私が恐れるのは、日本の好感度下落は、著者が指摘している「変れない日本」に対する失望があると思うのです。「変われない日本」の要因は、著者が指摘している「中央集権・利権構造国家」に加え、ルース・ベネディクトが指摘する「恥の文化」「集団主義」という日本文化の悪い側面が出てしまっていると思うのです。
 その様な現実を前に、企業はどう持続的成長を維持していけば良いのでしょうか。それは、国が変らなくても、周りが変らなくても、「自分は変る」という決意で経営をしていく事ではないでしょうか。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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