2015年02月15日

■■【経済の読み方】何が起こった2015年1月を時系列に見る

■■【経済の読み方】何が起こった2015年1月を時系列に見る

 世の中の動向は、アラカルト的に見ることも大切ですが、時系列的に見ると、また異なった面が見えてきます。
 ここでは、これまでブログ掲載してきました内容を、月単位に、コンパクトにまとめてご紹介します。

 


独善解説

■ 人間の寿命はどこまで延びるか? 2015/01/27

 NHKにネクストワールドという番組が日曜日に放映されています。その第2回は「人間の寿命」というテーマでした。

 なんと、人間の寿命は、現在は一日5時間ずつ延びているというのです。科学技術の革新がもたらす産物の一つです。このまま行きますと、30年後には、人間の平均寿命は100歳を超えるそうです。

 NMNという7種の眠っている遺伝子を活性化するだけで、加齢速度を抑えることがすでにマウスの実験で実証されています。それを日本の食品会社がすでに量産化を始めています。頭脳の視床下部から老化を指令する物質が出るそうですが、それを抑えることにより、寿命を延ばすことができるようです。

 病気を事前に察知して、警告を発してくれるようになるために、病気をしなくなるようです。

再生医療分野に3Dプリンターを取り込むことで、臓器の再生技術は期待される草です。高難度の手術もミスなく行う手術ロボットも登場します。

 また、「ナノマシン」という抗がん剤(マシンといっても機械ではなく薬)は、人間の体内を動き回り、がん細胞を見つけると抗がん剤を発射して、がん細胞をやっつけてくれるのだそうです。今日の抗がん剤は、がん細胞だけではなく、人間の健康細胞も攻撃してしまいますが、それがないのです。

 寿命が延びるということは、素晴らしいことですが、一方で、生きることに楽しみを感じない人間にとっては苦痛でしかないのではないでしょうか。


■ 和菓子にみる東西の違い 2015/01/22

 テレビを見ていましたら「和菓子にみる東西の違い」という番組に興味を持ちました。虎屋文庫研究主査の森田環氏が解説していましたので、ご紹介します。



1 お汁粉vsとぜんざい

 日本を東と西に分け、風習や人々の気質などを比較することは興味深く、古くから文献にも取り上げられてきました。食べものも例外ではないようで、材料や調理方法の違いが目立つようです。

 食べ物と言いましても範囲が広いですので、和菓子を中心に、見るだけでも大は違いがあります。

 寒くなると和菓子の代表の一つが、温かい「汁粉」や「ぜんざい」です。少々脱線しますが、江戸時代には、汁粉は、夏の食べ物だったと聞いています。

 汁粉もぜんざいも小豆を使った甘い食べものですが、東京育ちの私には、粒餡で汁気の多い、とろっとした中に焼き餅が入っています。このようなおしるこを「小倉汁粉」と言うのだそうです。

 これを関西では「ぜんざい」と呼ぶようですが、これに対して、こし餡で汁気の多いものは、東京では「御膳汁粉」、関西では、これを「しるこ」と呼んでいます。私が食べてきた小倉汁粉は、「田舎汁粉」とも言われ、少々さげすまされた食べ物のようです。

 「ぜんざい」といいますと、餅の上に、汁気のない餡をかけたものをいうと教えられてきました。東京に育ったと言いましても東京の西部でしたので、都心に出かけることを「東京に行く」と言っていました。子供の頃、デパートでぜんざいを食べさせてもらったときに、栗が入っていて、「東京はやはり高級なのだ」と思ったことを覚えています。



2 雑煮に見る東西の違い

 わが家では、醤油味のお澄ましに、焼いた長方形をした切り餅が入っています。関西では、白味噌仕立てが一般的なようで、しかも丸餅が入っているようですね。

 室町幕府の料理人が記した「山内料理書」があるそうで、餅を入れた味噌を使った調味料で整えた料理を雑煮と言ったようですから、関西の像にはこの流れを汲んでいると考えます。江戸の雑煮は、江戸時代中頃の「黒白精味集」という料理書に、「薄醤油仕立よし」という記述が見られます。歴史的にも時代の差があるのですね。

 丸餅と四角い切り餅と、形に違いがあるのも面白いですね。

 餅は神聖な食べものとして、鏡餅は丸い形をしていています。神事に用いる鏡をかたどって丸くなっています。関西の雑煮が丸餅を使うのは、このような伝統的な習慣が残っているのでしょう。

 それに対して、江戸っ子は気が短く、餅をひとつひとつ丸めるのではなく、平らにのして一気に切ったことが、四角い切り餅として根付いたのでしょう。



3 東西の桜餅

 春を思わせる桜の季節の和菓子といえば、塩漬けの桜葉の香りが楽しめる桜餅を連想します。

 東京では、小麦粉生地に薄いピンク色の着色をし、薄く焼いて、餡を巻いたものをいいます。関西では、道明寺、すなわち、もち米を原料とし、それを蒸して餡を包んだものです。

 東京の桜餅は、江戸・隅田川の川岸に植えられた桜の葉を利用して売り出され、花見客に、隅田川名物として広まっていきました。ところが始めは米粉で作っていたのが葛粉の生地に替わり、その後小麦粉生地にかわったようです。

 江戸で人気を博した桜餅は、関西にも伝わって道明寺になったようです。土佐屋という菓子屋が隅田川の桜餅を模して、冬と春には片栗粉、夏と秋には葛粉を薄く溶いた生地を焼いて売ったと記録があります。今日の道明寺の起こりは、明治30年頃、奥村又兵衛という人物が「嵯峨名物桜餅」として発売した、と記されています。意外に新しい和菓子なのですね。

 このような地域差は、各地域の風土や嗜好の影響などが複合的に影響しているのでしょうが、東京育ちの私の目にも、関西の方が上品さと歴史の長さを感じます。


■ 日韓国交回復50年 改善ができるのか? 2015/01/20

 日本と韓国が国交を回復してからことしで50年となり、出石直NHK解説委員のお話を中心に考えてみました。



1 50年目の転機

 経済界や若者の交流などは活発に行われていますが、近年、日本と韓国の国同士の関係は、こじれにこじれてしまっているように見えます。

 関係は”異常に”冷え切ったままで、安倍総理とパク・クネ大統領との首脳会談は、オバマ大統領を交えた会談を除いてまだ一度も実現していません。外相会談は行われていますが、これもすべて第三国での会談です。隣国同士ですので、相互の国を訪れての会談があってしかるべきです。

 では、なぜ政治レベルの対話が進まないのでしょうか。

 関係改善の主な障害となっているのが、慰安婦などの歴史認識や領土問題、そして両国の国民感情です。

 出石氏によりますと、韓国側のハードルが高過ぎるという見方です。韓国政府が、「慰安婦問題で一定の前進や歩み寄りがない限りは首脳会談には応じられない」という姿勢を崩していません。

 日本政府は、色々難しい課題はあっても、いや課題があるからこそ首脳会談を行って意志疎通を図りたいとしています。しかし、国内世論は冷めています。

 内閣府が2014年10月に行った世論調査では、韓国に「親しみを感じる」と答えた人は
31.5%で、一年前より10ポイント以上減っています。逆に「親しみを感じない」と答えた人は66.4%で、一年前より8ポイント以上も増えています。

 数年前の韓流ブームで日本から大勢の観光客が韓国を訪れたり、韓流スターが人気を集めたりした頃と較べますと、様変わりです。



2 なぜ、関係が冷え切ってしまったのか?

 イ・ミョンバク前大統領の竹島訪問や天皇陛下に対する発言が、一つの契機です。また、中国の台頭で、日本の国際的に相対的重要度低下も影響しているでしょう。

 しかし、何といっても歴史認識、とりわけ慰安婦の問題が大きいのです。さらに、歴史認識をめぐる葛藤が、相手国に対する世論を悪化させ、悪化した世論が政治的な歩み寄りを阻むという悪循環を生んでいます。

 例えば、2013年年末に安倍総理大臣が靖国神社を参拝した折に、韓国側が強く反発しました。それに対して、日本で韓国に対する反発が強まり、そうした動きが韓国に伝わると韓国側の反日世論が高まります。その繰り返しになっています。

 このように政治レベルで対話が進まなければ、国内の世論も改善しません。



3 2015年は節目で、チャンス

 「日韓国交回復から50年」、「戦後70年」、韓国からみれば「植民地支配解放から70年」、そして「南北分断から70年」と節目の年です。節目の年をきっかけに関係修復を図りたいという点では、日韓の外交当局者の考えも一致しています。

 日韓双方とも世論の大半は「日韓関係は重要だ」と考えているという調査結果もあります。

 ヘイトスピーチなどで相手の気持ちを魚出るようなことを行えば、ナショナリズムの高まりで、感情的になりK世論がさらに過熱しかねません。

 日韓両国でも様々な催しが企画されています。こうした行事を通して相互交流や相互理解を深めたいですね。

 日韓両国はここに戦後20年に亘る空白を埋めて、友好親善の新しい時代に入るべきですし、それを行うのは「今でしょう」。


■ 2015年、私たちの暮らしははどうなるか? 2015/01/15

 今年をどの様に過ごそうか、今年はどの様に変化するのだろうか、私たちの暮らしは良くなるのだろうか、等々考えている内に、新しい年を迎えて、もう2週間弱になります。

 「私たちの暮らし」という切り口で、NHKの今井解説委員のお話を核として、まとめてみました。



◇1 消費増税と物価

 昨年は、アベノミクス効果がまだら模様のために、収入の増加が物価上昇に追いつかず、わが家にとりまして生活感としては厳しい一年でした。

 潤っていらっしゃる人たちはいましたが、多くの人にとっては、輸入品の値上がりや増税で、私同様に暮らしは厳しくなったのではないでしょうか。そのために消費税が上がりました昨年4月以降は、節約の動きが広がってしまい、マイナス成長に陥ってしまったと言えます。

 2015年10月に予定されていました、消費税率10%への引き上げが、延期され、とりあえずほっとした方もおおいでしょう。一方で、円安傾向は本年に入ってからも続いています。

 例えば、食用油は、去年に続いて二度目の値上げがありました。ケチャップは、25年ぶりとはいえ、どの家庭にもある調味料です。

 円安で輸入品が高くなることは当然のことで、貿易赤字の今、円安は警戒が必要ですと、再三、当ブログで主張してきました。その円安による価格高騰は、円安が広く転嫁されるには、時間がかかりますので、これからも値上げが続く可能性はあります。

 一方、円安で日本経済に打撃になる原油価格ですが、国際相場が急激に下がっています。本来なら、国内のガソリンや灯油の価格が上昇するのですが、今はむしろ下がっています。ある専門家に寄りますと、原油安と消費増税による物価全体がバランスして、消費増税の影響が、今年の4月以降、なくなると言っています。

 マイカーを持たない人には、この恩恵は薄く、値上げ感が高いですね。

◇2 原油が下がると家計にメリット?

 原油が下がりますと、商品を運ぶ運送費や工場の電気代なども安くなります。このことは、値上げの動きを、全体的に抑える効果を期待できます。一方で、今後の円安と原油安とのバランスによっては、人によって負担感は変わってきます。

 家計の立場からみますに、収入が増えることが大変重要になってきます。

 政府談話では同じように考えているように聞こえます。年末の税制改正では、そのための対策の一つとして、親世代から子育て世代に資金を移すよう促す対策が盛り込まれました。

 以下、家計負担を以下に減らすか、放映内容をご紹介しておきます。

 家計には、1600兆円を超える金融資産がありますが、その60%を高齢者の世帯が持っています。一方、消費の中心は、子育て世代ですので、高齢者の資金を消費中心の世代に移すことが、消費マインドを高めるために効果的です。

 一定の目的で、親が子育て世代に、まとめておカネを贈与する場合、本来、10%から55%かかる贈与税を非課税にすることになりました。これにより、おカネを動かして、消費が増加することが狙いです。

 そのほかにも、「結婚や子育て」の制度ができ、「教育」そして「住宅購入」は期間が延長されたり、拡大されたりしました。

 いずれにせよ、消費税率が8%に上がったことで、低所得世帯の暮らしに影響がでないよう、不公平のない政治であって欲しいです。
その結果、多くの人が暮らしが楽になったと感じられるようなり、結果として景気が良くなるように早くなって欲しいものです。


■ 夢の燃料電池が現実に 2015/01/06

2020年の折ピック選手村が水素タウンになるというニュースが流れました。2015年1月は、自動車業界も画期的な年で、世界ではじめて、燃料電池車が市販されました。NHKの室山哲也解説委員のお話を中心に考えてみたいと思います。

1 燃料電池車とは?

 燃料電池自動車は、FCV(fuel cell vehicle)といわれ、今後マスコミでしばしば見聞されることになるでしょう。水素で走り走行中は水しか排出しない「究極のエコカー」といわれています。

 2014年12月中旬に、それまではリースだけだった燃料電池車が、日本国内だけではなく、世界で初めて市販されることになりました。水素を空気の酸素と反応させて電気を作り、モーターを回して走る自動車です。

 CO2ゼロの「究極のエコカー」といわれますことから、2015年を「水素元年」と呼ぶ人もいます。燃料電池は、自動車のみならず、水素社会を作り出す、大きなインパクトを持っているのです。FCVは、水素社会実現の走りと言える完成品です。

2 水素で走る原理は?

 水を電気分解しましと水素と酸素に分解されることは、子供の頃学びました。その逆の反応が燃料電池内で起こっています。すなわち、水素Hと酸素Oが反応し、電気+水+熱となります。

 ガソリン車などのレシプロエンジンでは、二酸化炭素CO2が排出されますが、水素電池では、それがないので「エコロジー」、すなわち「究極のエコカー」なのです。

 水素は爆発するという怖いイメージを私は持っていましたが、何と水素は宇宙空間の全体質量の7割まで達するポピュラーな物質なのだそうです。有機化合物、化石燃料、水などの中に存在するのですから、地球上、どこにでもあると言えます。

 すなわち燃料電池は、水素を発生させてエネルギーとして利用するための物なのです。

3 他のエコカーと、どこが違うのか?

 エコカーといいますとEV(electric car)、すなわち電気自動車や、ハイブリッドカーを連想します。

 「モーターで走り、走行中に二酸化炭素を出さない」ということでは、FCVもEVと変わりません。しかしEV電気を外から充電する必要があります。それに対してFCVは、自分が搭載している燃料電池で水素を発生し、それを使って車の中で発電します。

 燃料電池車のほうが、「走行距離が長い」「充填時間が短い」「電力が大きい」という利点があります。ただし、価格が高いのが最大の難点の一つです。

4 燃料電池車FCVの課題

 では、FCVが抱える課題を見てみましょう。

 これまでFCVの課題として、下述のように3つの課題が挙げられてきました。

 まず、気になるのが、水素タンクを積んでいますので、危険はないかということが気になります。ところが、その課題は、「安全性の向上」をテーマにして研究が進み、タンク設計などで改良が進み、ほぼ解決できたと言います。

 むしろ、課題は、価格とインフラの問題のようです。

 今後、量産でどの程度安くなり、庶民の手に届くところにいたるか、受容と技術面の問題が考えられます。

 それを解決するには「インフラ整備」、すなわち水素スタンドが、少なくても主要道路に点在しませんと、ガス欠ならぬ水素欠で立ち往生してしまいます。

 インフラとしては、水素を「つくる」「運ぶ」「配る」(水素ステーション)という3つの段階があると言われています。

 現状では、水素ステーションは、少なく、建設中の水素ステーションも、45か所と少ないです。

 また、一つのステーションを作りますのに、ガソリンスタンドの5倍、すなわち4~5億円もかかります。水素ステーション建設のコストダウンが不可欠です。

 水素を、どのように作るかも今後の課題として残されています。

 水素発生源として、製鉄所などから出てくる副産物がありますが、製鉄所がたくさんあるわけでないですね。そうなりますと、「石油や天然ガス」「水」を分解して大量に作ることになります。それには電力が必要となりますので、分解効率を高めることが急務です。
 将来的には、風力や太陽光など自然エネルギーを利用して電気を作り、それを使って水を分解する方法も利用されるでしょう。また、そのようにしないと「究極のエコカー」というのは、社会全体から見たら「究極」とは言えないことになります。

5 燃料電池による水素社会とは?

 現在は、原油などの化石燃料に頼った「化石燃料社会」ですが、燃料電池の普及などにより「水素社会」へ変身することで、「低炭素社会」の実現に近づくと言えます。

 水素を使った交通や、水素発電、農業(肥料)への活用、また自宅などでも活用すれば、エネルギーの自立や災害に強い社会にもつながると期待されます。すなわちエネルギー海外依存度が低く抑えられ、化石燃料の輸入に頼る比率が少なくなり、安全保障上におきましても「足腰の強い国」に変身できる可能性があるのです。

 2025年には、現在のハイブリッド車と同じ値段になると言われていますし、2030年には、水素発電も一般的になります。2040年ころに、再生エネでの水素製造(完全CO2ゼロ)の実現が目指されています。

 国内市場規模も、2030年(1兆円)から、2050年(8兆円)になると期待されています。

 日本は、燃料電池の関連特許は、世界一であるのです。日本の技術の強みを生かした成長戦略でもあります。2020年の東京オリンピック、パラリンピックまでに水素自動車を普及させたり、水素タウンを利用したりすれば、日本の水素技術の高さを、世界にアピールするとことができます。

 有力な成長産業の一つとして、大いに期待したいです。



■ リニア新幹線への期待と課題 2015/01/01

 1964年東京オリンピックの年に、日本人の期待を一手に集めたのが「夢の新幹線」ともいわれた今日の東海道新幹線の開業です。それから50年後の2014年12月17日に、最高時速500キロで、東京の品川と名古屋の間を40分で結ぶリニア中央新幹線が着工されました。開業は、13年後の2027年を目指しています。

 世界に例のない技術が導入されていますリニア中央新幹線ですが、期待、疑問、不安が入り混じっているのではないでしょうか。

 NHKの中村幸司解説委員のお話を中心にまとめてみました。

◇1 リニア新幹線に関するQ&A

 リニア中央新幹線は、品川から、南アルプスを貫いて、名古屋まで建設されます。工事費は5兆5235億円と見込まれ、全額をJR東海が自己資金でまかなうと言いますので、その時点で「大丈夫?」と疑問に思った人もいらっしゃるでしょう。

 近年、様変わりをしている品川駅のリニア中央新幹線のホームは、東海道新幹線の品川駅の真下、地下40メートルに建設されます。

 まず、懸念されるのが深度の大きさです。乗り換えに不便があるのではないかと懸念されますが、東京には、この程度の深さを走る地下鉄もあり、さほど懸念することはなさそうです。

 次に荷になるのが強力な超電導磁石を電磁波の影響です。列車に乗り込む時は、乗客や電子機器等が磁石の影響を受けにくくする「磁気シールド」で囲まれた特殊なゲートを通るそうです。客室も磁気シールドで囲まれています。

 安全性も気になりますね。

 リニア新幹線の研究は、いまから52年前、東海道新幹線開業前の昭和37年に始まったといいますから、その地道な努力には驚きです。

 宮崎の実験線では、超電導状態を安定して保つ磁石の研究や人を乗せる車両の開発など実用化に向けた実験が続けられたことは、まだ記憶にあります。宮崎で実験している当時は、夢のまた夢と言っても過言ではありません。

 その積み上げが、今日の新幹線での経験にプラスされ、安全性は高いようです。

 総工費が5.5兆円という大きな予算が組まれるのですから、それが運賃などに影響して、高額な支払が求められることも気になりませんか?ところが、東海道新幹線の指定席料金に700円上乗せした金額と言いますから、驚いたのは私だけではないでしょう。

 全席が指定であることはもちろんで、1編成で、およそ1000人の乗客を運ぶことができます。品川駅を発車してから2分ほどで、時速500キロに達します。ほとんどがトンネルの中を通るため、富士山ですら見られるのは一瞬だそうで、景色を楽しむローカル列車の風情はなさそうです。


◇2 リニア新幹線の効果と課題

 開業によるさまざまな効果も期待されています。

 品川・名古屋間40分というのは、費用を考えず、時間だけのことを考えますと名古屋が東京の通勤圏内に入ることになります。その経済効果を高く評価するエコノミストも多いようです。民間のシンクタンクの試算によりますと、移動時間の短縮などに伴う経済効果は、年間およそ3700億円にのぼるとされています。

 現在の東海道新幹線では、「のぞみ」の運転本数が減り、「ひかり」や各駅停車の「こだま」中心のダイヤに変更されます。こだまやひかりに乗ったことのある人はご存知のように、現状では通過待ちが非常に多いです。それが少なくなるため、静岡など途中駅までの所要時間が短縮されるようです。

 リニア新幹線の実現に、期待の声は大きく、2020年のオリンピックに間に合わせるようにと言う声さえ上がりました。しかし、安全性を重視した準備や工期の短縮は不可能で、それはきっぱりと断られたそうです。

 とはいえ、巨大プロジェクトだけに「環境への影響」、「工事費」の問題、「安全性の向上」など、課題は山積のはずです。

 まず「環境問題」を挙げられます。

 リニア新幹線は、全体の86%がトンネルです。トンネル部分は、沿線への騒音は抑えられますが、一方で環境への影響が懸念されます。

 自然景観への影響もありますが、忘れてならないのが工事残土の問題です。

 青函トンネルの時もそうでしたが、実際に掘られるトンネル本坑、非常口に通じるトンネル、工事で出た土砂を運ぶための「工事用トンネル」、地盤の調査などの「先進坑」と、いろいろなトンネルが必要です。

 このようなトンネルの掘削で発生する土砂の量は、品川・名古屋間全体で、5680万立方メートル、東京ドームおよそ45杯分です。このうち、具体的に処分先が決まっているのは、15%にとどまっています。

 使い道がない土砂については、山間部に置き場を作って土に植林することも検討されているようですが、植林しても周辺の山と同じような深い緑になるまでには、数十年の年月がかかります。

 さらに、地下の水の流れが変わることによる影響も懸念されています。

 例えば、大井川については、地下の水がトンネルの中に浸み出すため、水の流れる量が1秒あたり12トンだったのが、10トン弱にまで減ると推測されているようです。

 地下の水が少なくなって、湧水や小さな支流の水が減るということも想定されます。その結果、植物が生息できなくなったり、動物や人間の生活への影響など、予測不可能な問題が発生したりしそうです。


◇3 総工費の見積は予算通りに行くのか?

 公共工事でつきものなのは、計画を国会で通すために、総工費の見積が甘い結果、後に予算不足が起こるのがあたり前という、これまでの事実です。その一つの例が、すでに大幅な見直しが迫られている、2020年のオリンピック予算です。

 2045年に大阪まで延伸した際の品川-大阪間の工事費は、合計9兆300億円とされています。それをJR東海の自己資金だけでまかなおうというのです。

 JR東海は、これだけの投資効果はあるとしています。そうでなくても建設業関連の人手不足や資材高騰などから工事費の予想以上の高騰が懸念されますし、今後の人口減少を考えますと、需要が予測通りにあるのでしょうか?

 万一、トンネル内で異常が発生したときにも避難対策だけではなく、そのための諸設備や運用の仕組み作りもキチンと算定されているのでしょうか。素人判断ですが、安全目から、想定外の費用が大きく出て来るような気がします。

 日本の大動脈という東京圏と大阪圏をリニア中央新幹線と東海道新幹線で、二重にしておくことは、リスク管理上、不可欠と思います。

 一方、リニア中央新幹線はビジネスや生活を大きく変える可能性を持っています。品川から大阪まで67分で結ばれるという便利さは、そうでなくても懸念されています東京一極集中問題を加速させはしないのでしょうか。

 品川・名古屋間40分というのは、いまの「のぞみ」に比べて、約50分の短縮になります。[半分以下の時間」と考える人もいるでしょうし、「狭い日本、急いで駆け抜けて何になる」という人も出るのではないでしょうか。

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