2015年03月24日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】先端経営学は実証性重視

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】先端経営学は「実証性」重視

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

  • 今日のおすすめ

 

 『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(著者:入山章栄 英治出版)

  • アメリカの経営学者はドラッカーを読まない(はじめに)

 今日の紹介本は、いきなり「経営学の最先端を行くアメリカの経営学者は、『経営学の父』と言われているドラッカーの本を読まない」という所から入って来ます。  著者は、現在の世界の経営学はアメリカがリードしている事実は否めないとして、敢えて「アメリカの経営学(者)」と「世界の最先端経営学(者)」とを同義で使っています。因みに、世界最大の経営学会「アカデミー・オブ・マネジメント」の2012年の年次総会に世界85カ国から9,369人の経営学者が出席しました。国別の出席者数は、アメリカが50%、日本は0.4%、アジアは7%、英・仏・独、合わせて14%とアメリカが中心である事、日本が極端に少ない事がわかります。更に、世界のトップクラスの経営学の学術誌(「アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル」「ジャーナル・オブマネジメント・スタディーズ」等)に掲載される論文の約80%は統計分析を用いた論文という事です。

 この事実をどのように捉えたら良いのでしょう。著者は、まず、経営学を「実証性」と「規範性」に分けています。今の経営学の主流は「実証性経営学」です。ドラッカー理論は「何が組織にとって望ましいか」という「規範性経営理論」と捉えます。

 もう一つの分け方は、「演繹的」と「帰納的」の分け方です。日本の経営学理論はケーススタデイに基づく「帰納的理論」が圧倒的に多いと言われています。しかし、世界の主流は、「一般・普遍的理論」から統計分析などにより「個別的結論」を導き出す「演繹的理論」です。

 このような経営学の先端的状況を知り、どちらかと言えば、「規範性理論」「帰納的理論」に親しんでいた私が、この紹介本から何を得たか、その一部をご紹介しましょう。

  • 新たな知のフロンティア

【ポーターの「競争戦略」が生まれ変わる】

 「ファイブ・フォース」「バリュー・チェーン」などで代表されるマイケル・ポーターの「競争戦略論」の基本コンセプトは「持続的競争優位」と言えます。

 アメリカの経営学者、ウィギンズとルエフリの二人は「持続的競争優位が本当に存在するか」という疑問に大規模なデータと統計分析手法を用いて挑戦しました。二人は、1972年から1997年までの全米40産業の6,772社の投資利益率などの時系列データを用いて、「10年以上続けて同じ業界のライバルより高い業績を残した場合」を「持続的競争優位」を持っているとみなしました。そしてその様な企業はどのくらいあるか分析しました。

 結論として以下の3つの発見をしました。

  1. 「持続的競争優位」を実現している企業は、全体のわずか2~5%にすぎなない。

  2. 近年になればなるほど、「競争優位」を実現できる期間が短くなっている。「持続的競争優位」を実現する事はどんどん難しくなってきている。

  3. 他方で、いったん競争優位を失ってから、その後再び競争優位を獲得する企業の数が増加している。一時的な優位を鎖のように繋いで、結果として長期的な高い業績を得ている。

    この研究結果を踏まえてダヴェニは「ハイパー・コンペティション下では、積極

的競争行動をとった企業のほうが高い業績を上げられる」との論文を発表し、「業績の向上につながる積極的競争行動は何か」という新たな「コンペティティブ・ダイナミクス」という研究テーマの流れを作りました。

 私たちはこのような、先端の経営学の研究を踏まえ、既存の考えをどう生まれ変わらせたら良いのでしょう。ポーターの「競争戦略論」を「守りの戦略」と位置づけ、高業績を維持するには、それに加え「攻めの戦略(コンペティティブ・ダイナミクス)」を併せて考え、その上で戦略的ポジショニングを考えるべきと変って行きます。 

【シュンペーターのイノベーション理論が生まれ変わる】

 シュンペーターのイノベーション理論は、簡単に言ってしまえば、「イノベーションの五つの構成素材、影響要素を、新たに組み合わせ、新たな創造をすること」と言っても良いでしょう。

 「新たな組み合わせとは」を求める研究がされました。カティーラとアフージャが世界のロボットメーカー124社のデータを用い、各企業の「知識の範囲」を計算しました。新たな特性を付加した製品を生み出す頻度をイノベーションの成果の代理指標とし、「知の範囲」との関係を分析しました。この結果「知の範囲」は幅が広いほど良い結果が出るが、しかし、極端に幅が広がるとかえってマイナスの効果が出るとの研究結果を出しました。

 サンプソンは、世界34カ国の情報通信装置産業437社の特許引用データを用いて、研究開発の提携をしている企業同士の「組み合わせによる知の範囲の指数」を計算しました。アライアンス企業のイノベーションの成果と「知の範囲」との関係を調べ、「ほどほどの知の広がり」が良い成果に繋がるとの結論を得ました。

 これらの研究結果を踏まえ、著者は次の結論を出しています。

  1. イノベーションの本質の一つは、知と知との組み合わせから新しい知を生み出す事であり、そのためには企業は知の幅を、ほどほどに広げる必要がある。

  2. 新たな知を求める「知の探索」に加え、既存の知を深める「知の深化」が共に必要である。

  3. 業績が良いときの、イノベーションの停滞(コンピテンシー・トラップ)を避けるために、企業は組織的に「知の探索」と「知の深化」のバランスを保ちながら、「コンピテンシートラップ」を避ける戦略を進めることが重要である。

    この結論を実践している企業が、1月20日のBSジャパン「ガイヤの夜明け」で

紹介された、文具メーカーの「キングジム」です。日本全体の特許から、自社の得意分野と組み合わせる事が出来る特許を選び、その特許を保有する企業との連携で、次々と新たな製品を開発し、新商品を生み出しています。なかでも素晴らしい製品と思ったのは、マグネットも画鋲も要らない掲示板です。

【新たな知見「ホフステッド指数」と「コグート・シン指数」】

 ヘールト・ホフステッドはアメリカIBM社の40カ国、11万人の従業員に行動様式と価値観に対するアンケート調査を行い、様々な国の文化・国民性を定量的に測定し指数化しました。コグートとシンは、この「ホフステッド指数」を使って、それぞれの国の文化的・国民的距離を定量化し「コグート・シン指数」を計算しました。この結果「ホフステッド指数」や「コグート・シン指数」による『国民性分析』は意外な結果を示し、日本人と価値観や行動様式が最も近い国はハンガリー(1番目)とポーランド(2番目)。日本と同じアジアの国である韓国(39番目)や中国(47番目)は、意外にも欧州のドイツ(7番目)やフランス(28番目)よりも離れています。コグートとシンは、米国系506企業のデータを使い、海外進出形態(買収、合弁)の実態とこの指数とが密接な関係にあることを分析、証明しました。世界の経営学者の間では常識的な指数ですが、私は初めて出会った指数です。詳細は紹介本をお読み下さい。

 経営学は進歩していますね。遅れないようにと警告を与えられました。

  • 既知の経営理論がいきいきとして来る(むすび)

 ご紹介させていただいたように、現在の最先端の経営理論を知る事で、既知の理論がその有用性を増すことがご理解頂けたと思います。また今まで知らなかった新たな経営理論も有効に使うことが出来ます。その意味で、最先端の経営理論に興味を持っておく事は大切と思います。

 著者は、私達が学術誌を読むのはなかなか困難と言います。最先端の経営学をビジネス実務への応用論文として掲載する「ハーバード・ビジネス・レビュー」や「一橋ビジネスレビュー」が有用と言います。

 私も、これらの本に、今までとは違った視点で向き合えると楽しみです。新たな知のフロンティア、新たな有用な経営理論を求めていきたいと思います。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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