2015年07月28日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】イスラム戦争から学ぶ

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】イスラム戦争から学ぶ


 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。



■      今日のおすすめ


 『イスラム戦争―中東崩壊と欧米の敗北―』(著者:内藤 正典 集英社新書)



■      元ユネスコ学術アドバイザーの見る中東情勢と今に至る歴史(はじめに)


 まず、著者の次ぎの記述に注目しましょう。『第二次世界大戦終結直後に制定されたユネスコ憲章。その精神は、今、イスラムをめぐって世界中が争っている戦争についても、見事に本質を見抜いています』。


 ではそのユネスコ憲章の精神とはどの様なものでしょう。ユネスコ憲章の前文は次のように述べています。『戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない。相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて、世界の諸人民の間に疑惑と不信を起こした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争になった』。そしてユネスコを、すべての人々に教育をと言うスローガンのもと、教育、文化、科学を通じて平和を希求する国連機関と位置づけています。(残念ながら、多くの日本人は世界遺産のユネスコにしか注目していませんが。)国連は領域国民国家群の共存を希求します。その一機関であるユネスコも同様に、戦争の原点は、領域国家の利害以前に「人の心」にあるとして、創設時の憲章を以って、「人の心」から生ずる戦争をなくし平和を希求しようと宣言していると著者は主張します。


 そして、イスラム戦争について著者は次のように結論付けます。『心の中に戦争を生み出しているのは、一見するとイスラム国の側に見えますが、そうではありません。何世紀にもわたる西洋の「力」をムスリムは理解しています。どの様な優れたものをもたらしたのか。どの様な邪悪なものをもたらしたのか。その両方をムスリムは熟知しています。しかし西欧世界はムスリムのことをいまだに知りませんし、知ろうともしません。私(著者)が本書で、イスラム・フォビア(イスラム嫌い)が重層的にムスリムを苦しめてきたことを指摘したのも、現在のイスラムをめぐる戦争が、やはり心の中に生まれたもの(戦争の原点はイスラム・フォビア)だと確信しているからです』。


 私も、「ムスリムのことを知らない、知ろうとしない」一人でした。紹介本を読んで、「イスラム国(IS)」に至る、イスラム世界と欧米の関係に係る、長い歴史の一端を知ることが出来ました。その一部を以下で紹介しながら、そこから何かを学び取ってみたいと思います。



■      中東情勢を客観的に概観し分析する


【現在のイスラム情勢が混迷に至った歴史の原点とその背景にあるメタ】


 紹介本は次のように、第一次世界大戦後の中東の歴史を語ります。『第一次世界大戦後、レバント(レバノン、シリア、ヨルダン等の地中海東部沿岸一帯を指す)一帯の国境はがらりと変わります。1916年英、仏が主体となって決めたサイクス=ピコ協定によって、現状の国境線を両国の利害を基に線引きしました。この為、民族や、宗派の分布は関係ありません。クルド人は、トルコ、シリア、イラク、イランにまたがって分断され、独自の国を持つ事ができませんでした。今日も続く民族問題、宗教・宗派問題の原点は、このサイクス=ピコ協定による線引きとシオニストにパレスチナを与えてしまう事になるパルフォア宣言(1917年)にあるのです』と。確かにその様に指摘されると、成程と納得する内容です。更に著者は続けます。『真相が明らかにされないままでの、アメリカのアフガ二スタン侵攻(2001年9月)、誤った情報に基づく、対イラク戦争(2003年3月)へと失敗を繰り返します。このような失敗の繰り返しの根底には、イスラムの基本を知らずにムスリムの人間像を誤認し、その果てに彼らと敵対し、攻撃を正当化し、多くのムスリム一般市民が犠牲となったのです。それはアメリカに限らず、中国のウィグル問題、ロシアのチェチェン紛争等も構造は同じです』。


 私達はこのような著者の主張を、真剣に考えてみる必要に迫られています。お互いの殺し合いが続いている状態が放置されて良い訳がありません。


【トルコ共和国のイスラム戦争への不参加から学ぶ事】


 トルコ共和国は、NATO加盟国にも拘らず、アフガン侵攻(2001年)、イラク戦争(2003年)への同盟国としての参戦を拒否しています。様々な理由があるでしょうが、同じムスリムとして、自らの参戦により、イスラム戦争が一層混迷を深める事を十分承知しているからではないでしょうか。


 トルコ共和国はアフガニスタンにISAF(国連治安支援部隊)を出しましたが、一人の死者も出していないとのことです。それは、アフガニスタンのムスリムの気持ちを理解して行動したことによると、著者は言います。又「イスラム国」から人質を無事救出した事も、同様の事が考えられます。相手の文化、相手の気持ちを理解する事が、対立を避けるため如何に必要か学ぶべきではないでしょうか。


【日本に集まったアフガニスタンの対立勢力】


 2012年6月同志社大学に、タリバンも含めた、アフガニスタンの対立勢力が集まり、和平会議が持たれ、その後、共に食事を囲んだとのことです。著者が同大学教授として、尽力した結果、京都において、未だ嘗て、世界中どこでも実現しなかった、アフガニスタン政府とタリバン代表者との会談が持たれたのでした(和平は成立しませんでしたが)。著者は、タリバンの代表が日本に来て和平会議に臨んだのは、仲介者の存在などの要因もありますが、なんといっても最大の要因は、日本がアフガニスタンに戦闘部隊を送っていないこと、及び、憲法第9条の存在を上げています。



■      日本がテロや戦争に巻き込まれないために(むすび)


 私たち経営に関る者にとって、経営理論・マネジメント理論も大切ですが、本書を読むうちに、悲しい殺し合い、戦闘からのアメリカの帰還兵の精神障害、多くの自殺者の発生等悲惨な事実を目の当りに知り、平和がビジネスの基本と改めて思いました。


 上記で見てきましたように、国連憲章51条で認められている集団的自衛権の名のもと、欧米がアフガン戦争に突入し、様々な国を巻き込み、母や子を含め多くの殺戮や難民を生み出してきました。現在に至るまでその流れは、悲惨さを増すばかりです。


 日本も集団的自衛権を容認する方向に向けて、走っています。しかし、憲法9条は厳然と残っています。


 憲法9条第一項の条文(「・・国際平和を誠実に希求し、・・戦争、武力による威嚇・行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」)には、ニューヨークの国連本部にある「イザヤの壁」に書かれている、聖書・イザヤ書2章4節『彼らはその剣を鋤に、その槍をかまに打ち直し、国は国に向って剣を上げず 二度と戦いの事を学ばない』の精神が、折り込まれたとされています。


 上記で見て来ましたように、憲法9条があり、アフガニスタンに戦闘部隊を送っていないが故に、アフガニスタンの対立勢力が日本に集まりました。


 私達は改めて、ビジネスの基本である、世界の平和を実らせる政治が行われるよう、見守って行きたいものです。



【酒井 闊プロフィール】


 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。


 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。


  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm


  http://sakai-gm.jp/


【 注 】


 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。



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