2015年11月13日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】外国人から見た日本(2)

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】外国人から見た日本(2)

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『菊と刀―日本文化の型―』
     (著者:ルース・ベネディクト 長谷川松治 訳 講談社学術文庫

■ 「菊と刀」は今も多くの日本人に読まれている(はじめに)

 「私たち日本人は何者か」「私たち日本人はどの様な強みと弱みを持っているのか」このような問いを自問したとき、すらすらと客観的な正解を得られるのでしょうか。「『ジョハリの窓』の法則」に「Open Window(開かれた窓=自他共に知っている)」と「Blind Window(気づかない窓=他者は知っているが自分は知らない)」の象限がありますように、その答えは自分自身でわかる部分と自分以外の他者から見なければ解らない部分に分けられるように、日本人自身でわかることと、日本人以外から見なければ解らないことに分けられるのではないでしょうか。

 「外国人から見た日本」シリーズの第二回として「菊と刀」をご紹介します。

 本書は著者ルース・ベネディクトが、戦前(1944年9月)アメリカ・戦時情報局の依頼により、日本を征服し、占領統治をする戦争目的のための報告書として書かれたものです。
 しかし、その内容は、本書の巻末で、故人となられた著名な法社会学者の川島武宜先生が「評価と批判」で、「自国に有利なことを書くことなく、事実を歪曲することなく、地味な科学的な敵国分析」、「今までの日本人論のどれにもない新しい感覚と深い鋭い分析とを持っている」と述べているように、文化人類学者としての著者ルース・ベネディクトが書いた学術書としての日本人論です。

 本書は、1946年に原著が発刊され、1948年に日本語訳本が発刊されました。以来今日に至るまで、日本語訳の本書は、現在も版刷を重ね、初版から数えると版刷は150を超え、出版界での特異な出版物となっています。隠れた名著と言えるのではないでしょうか。

 本書を、P・E・S・T(政治、経済、社会・技術)の視点から見ると、私達の行動の背景には、ほぼ無意識に、文化・民族精神(日本文化の型)が働いていると捉えるべきではないでしょうか。その上で、文化・民族精神(日本文化の型)が「強み」として働いているのか「弱み」として働いているのかを認識し、「弱み」として働いているのであれば、「弱み」を排除することに本書の意味があるのではないでしょうか。

■ 人類学者ルース・ベネディクトの的を射た分析

【「菊と刀」の書名の所以】

 著者のルースは「菊と刀」の書名の所以をこのように書いています。『「不遜であるとともに礼儀正しく」「頑固であるとともに順応性に富み」「保守的であるとともに新しいものを喜んで迎え入れる」「自分の行動を他人がどう思うだろうか、と言うことを恐ろしく気にかけると同時に、他人に自分の不行跡が知られない時には罪の誘惑に負かされる」など、見て見ぬふりを出来ない矛盾を日本人が持っていることに驚いた』と著者ルースは記しています。一人の人間である日本人が、相矛盾する行動をする事を、「菊と刀」と言う対立する言葉で表し、日本人論を書くに当たっての書名にしたと読むことができます。

 著者ルースは、日本の文化を研究するに当たり、日本の歴史(日本の律令時代から第二次世界大戦直後に)ついてかなり突っ込んだ研究をしています。

 その歴史的背景の中で築き上げられてきた日本文化の類型の特徴的なものの中で、経営に関係すると思われるのは、「各人が自分にふさわしい位置を占める文化」と、「西欧文化である『罪の文化』に対する日本の『恥の文化』」です。

【各人が自分にふさわしい位置を占める文化】

 著者ルースは、この文化を別の表現で、「『階層制度』を認め、その階層の中(はみださない事)での日常生活の『保証』と『安全』が確保される文化」だと言います。

 著者ルースは、日本の有史の中で、律令時代、武家時代・江戸時代、明治時代から戦前(近代)、戦後(現代)と時代は変わっても、ヨーロッパのように階層が入れ替わる革命はなく、各時代において階層制度が大枠で維持されて来たと言います。(詳細は本書の深い分析をお読みください。)敗戦後占領下で制定された「日本国憲法」も、序文の前の箇所に、「朕は、・・・帝国憲法第73条の規定による議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、公布せしめる」と記述され、背景にある事実の激変は兎も角、形の上ではスムースに新しい時代への移行がなされています。

 著者ルースは、階層制度の基本は家族にあると言います。世代、年齢、性別などの因子により、それぞれの「ふさわしい位置」を定める暗黙の詳細な規則が規定され、その詳細な規則を子供の時代から躾けられ、一人一人は、「ふさわしい位置」を守り全うする「期待どおりの人間」になることで、「ふさわしい位置」を『保証』され『安全』を得られると言います。

 著者ルースは更に、家族にベースを置く『階層制度』は、因子を変えながら、地域社会、政治・経済・職場社会、国家社会のあらゆる生活領域に応じて決められていると言います。相手によって違う「相応しい『おじぎ』の仕方」「相応しい『敬語』の使い方」に特徴的に現れていると言います。

 「ふさわしい位置」を大切にする文化が、その場の空気を乱さない文化、自分の主張をしない文化として、経営の「弱み」となっていないかを検証をする必要があるのではないでしょうか。

【「恥の文化」と「罪の文化」】

 著者ルースの分析の中で、特徴的といわれるのが、日本の「恥の文化」、西欧の「罪の文化」の区分です。

 ルースは、「恥の文化」について、「恥」とは他人の批評(嘲笑や拒否など)に対する反応を言い、他人の批評すなわち外部的強制力に重きを置く文化を「恥の文化」と定義します。一方「罪の文化」については「道徳の絶対的(普遍的)標準を説き、良心(内面的強制力)の啓発を頼みにする文化」と定義します。もちろん西欧にも恥の意識はあると言います。強弱の差においてそのように定義すると言います。

 「恥の文化」により生じやすいとよく言われるのが、集団主義、無責任体制、身内意識です。「赤信号、皆で渡れば怖くない」(欧米でこれをやり、厳しい目で見られた経験を持つ人が多い)といった集団主義の風潮は、少数意見を排除し、組織の活性化を削ぐ原因にもなりかねません。またよく言われる「日本人は議論下手」にも通じ、誰の意見か不明確になり、無責任体制にも繋がります。更には多数派に属している安心感が身内意識を作り上げることも有ります。これらが経営の「弱み」になっていないか検証する必要があると思います。

■ ルース・ベネディクトの分析から何を学ぶべきか(むすび)

 日本企業の経営の構造的要素に、日本文化の類型が、多い少いの差はあっても、影響していることを認めることは、経営にプラスになるのではないでしょうか。

 2008年度から継続して数字を比較できる上場企業110社の海外売上高比率は67.6%(2015年4-6月―9月8日日経朝刊―)に至っている現在、外国文化を理解する必要性、日本文化と外国文化のシナジーを図る必要性に迫られていると言えます。

 また、海外とは関係の少ない中小企業においても、日本文化の経営への影響を認識し、「強み」を生かすことは当然として、「弱み」を排除する仕組みの構築・改革に向けて経営の舵を切って行くことが大切ではないでしょうか。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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