2018年03月27日

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】IoTの神髄に迫る

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】IoTの神髄に迫る

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。


 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『INDUSTRIE4.0「日本の製造業はIoT先進国ドイツに学べ」』


(熊谷 徹著 洋泉社発行)


■      ドイツ在住の著者が発信する「IoTの真実」を傾聴しよう(はじめに)

 今回この著書をご紹介するきっかけは、日本経営士協会九州中国支部の原田剛先生(日本経営士協会メルマガ656号【会員紹介】欄で【自己紹介】をしておられます)


からお便りを頂いたことに始まります。原田先生は、私が昨年の8月に本欄でご紹介した『インダストリー4.0時代を生き残る!中小企業のための「IoTとAIの教科書」』(島崎 浩一著)を読まれ、そこには書かれていない、「IoT」「インダストリー4.0」についての真実・表裏が、『日本の製造業はIoT先進国ドイツに学べ』には書かれている、とアドバイスを下さいました。併せ、日本経営士協会のメルマガ、経営士のブログの読者の皆様に今回の紹介本を紹介してあげて欲しいと仰って下さいました。

 「経営コンサルタントの本棚」を通じ、支部の違う原田先生と新たな繋がりが出来ましたことは本当に感謝です。

 今回の紹介本の特異性は、著者の熊谷氏が1990年以来ドイツ・ミュンヘン市に在住するジャーナリストであることにあります。加えて、国家プロジェクトの「ドイツ版IoT」「インダストリー4.0」の生みの親の一人である学術機関「ドイツ工学アカデミー」の会長ヘンニッヒ・カガーマン教授(元SAPのCEO)と直接・緊密なインタビューを通じて、微に入り細に入り、光の部分に伴う影についても聞き出し、読み解いている点です。

 更には、ドイツ国内の「IoT」の具体的な進展状況を、著者自身の目で確認しています。それは他のIoTに関する著書のように、誇張的でなく、夢を語るのでもなく、現実の状況を有りのままに伝え、今の日本にとって何が課題かを明確にしているのです。そこがこの紹介本の素晴らしいところです。

 次項で幾つかの「IoTの真実」を示します。それは日本ではまだ認識されていない、或いは意識の低い事項が多くあります。字数の関係もあり全てをご紹介できません。

 IoTに関心を持っている方は是非この紹介本を手に取ってお読みください。他のIoT関連の本にはない、「IoTの真実」を見いだせるでしょう。IoTに対する正しい方向感をもって、この課題に対処していく施策を見いだせるでしょう。


■      知っておきたい「IoTの真実」

【インダストリー4.0の真の狙いは「スマートサービス」】

 IoTと言えばすぐ頭に浮かんでくるのは、「スマート工場」「マスカスタマイゼーション」「サービタイゼーション」です。しかし、カガーマン教授は「製品の輸出や、海外での組み立てだけではなく、製品の製造ノウハウをソフトウエアとして、デジタル・プラットフォームにアップロード(公開)することによって、外国の顧客に販売するという方式も導入すべき。さらに、インターネットで繋がれた製品や部品が発信するビッグデータを分析することよって、能動的に顧客に新しいサービスを提供すべき。」と主張し、これを「スマートサービス」と定義し「インダストリー4.0」の核だと、革命的な提言をしています。

 カガーマンが目指すのは、製造業とサービス業の融合であり、製造業におけるサービスの収益に占める比率を、デジタル化によって高めることが重要と訴えます。

 この「スマートサービス」の背景には、知的財産の保護、個人情報保護の問題など解決しなければならない問題があります。また、IoTがインターネットによって繋がることが前提であるが故に世界的問題であるのです。

 ここで重要になってくることが次のテーマであり、日本(政府)が出遅れている、「国際標準化」の問題です。

【国際標準化をめぐる独米の接近】

 知的財産の保護、個人情報の保護の問題も、国ごとに法律や考え方の違いから、世界的なルールが必要ですが、これについては問題の指摘にとどめます。

 喫緊の課題は、IoTの重要な下部構造であるデジタル・プラットフォームやデーターウエアハウスなどをバーチャル空間に設計、構築するには「参照アーキテクチャー(reference architecture)」(設計、構築に必要な言語・地図)の「国際標準化」が必要です。各国でバラバラに開発したIoTシステムでは相互のコミュニュケーションが出来なくなることを避けるためです。

 ここで、IoTシステムの国際的標準規格を開発するため、ドイツのIoT推進機関「プラットフォーム・インダストリー4.0」と米国のIoT推進団体「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」が2016年3月スイスで開いた会議で、提携の合意をしました。IICには、日本の企業では、日立、東芝、トヨタ、NEC、富士通横浜国大などが参加しています。

 著者は、「国際標準規格の開発の段階で、日本も責任あるIoT推進組織(政府、経済界、学界、労働団体、企業などで構成)を作り、積極的に国際標準規格作りに参画しなければ、日本のIoT推進に支障が出る」と主張します。

【中小企業をめぐるドイツの現状】

 ドイツの中小企業の企業数の比率は、99%強とほぼ日本と同じで、経済界における重要性は、日本と同様です。現状では、ドイツの約60%の中小企業が「インダストリー4.0」の利用に疑念を抱いているというデータも出ています。ドイツでは、中小企業の参加しなければ「インダストリー4.0」の成功はないとされており、一つの障害となる可能性もあります。

 これに関して、著者は、カガーマンのインタビューを引用しながら、「現在の国際競争力を失いたくないのであれば、デジタル・プラットフォームを使うインダストリー4.0では、秘密にすべきノウハウとプラットフォーム上で公開して構わないノウハウを切り分け、新しいイノベーションから取り残されないよう前向きに対応すべき」と主張しています。

【日本の「インダストリー4.0」への取り組みの現状と課題】

 日本に於ける「インダストリー4.0」への取り組みは、政府レベルでは、ドイツよりも5年遅れた2016年の日独の「IoT・インダストリー4.0の協力に関する共同声明(2016年4月)」に始まります。

 また、民間レベルでは、2015年6月に研究団体「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IIC)」(日立、トヨタ、三菱重工、富士通、NECなどの大企業のほか多数の中小企業が参加)が設立されました。2015年10月に「IoTコンソーシアム」(2017年1月現在で2,812社の法人会員が参加。経済産業省も参加しているが、ドイツのように政府が主導権を持つ形ではない。)が設立されました。

 著者は、日本の現状と課題に関し「IoTという21世紀最大の技術革命に乗り遅れることなく、また負の側面への十分な対応(雇用の問題、新たな職業訓練の必要性、貧富の差の拡大への対処等)を考慮した場合、日本政府が主導的な役割を演じるべきである」と主張します。


■      日本はドイツからの学びをどう生かすべきか(むすび)

 著者は、紹介本を書いた動機を次のように述べています。『ドイツに住み、「インダストリー4.0」を目の当たりに見ていると、「ドイツの中小企業はこの変化に耐えられるだろうか」という強い疑問を持った。また、「米独が世界標準を確立し、日本は蚊帳の外に置かれるのではないか」という強い危機感を抱いた。』

 この著者の「インダストリー4.0」に対し抱いている疑問・危機感を読むにつけ、IoT社会に対応していく危機感が、日本社会には未だ不十分と思わざるを得ません。それぞれの立場から危機感をもって「IoT」「インダストリー4.0」に対応していくべきではないでしょうか。競争相手は先を走っているかもしれません。

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

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